池田信夫氏のデータ解釈が恣意的な件

池田信夫blog:失業先進国フランス 彼の賞賛するCPE反対運動によって雇用改革がつぶされたフランスでは、何が「実現」したのだろうか。次の図はUNDPによる世界各国の若年失業率(15〜24歳)の比較であるとして20Unemployment in OECD countriesの数字を挙げている。la_causette:目の前の500人のためだけでなく、背景にいる数万人、数十万人のためにできることを書いた弁護士の小倉秀夫氏に対する反論なのだけれど、どうも変だ。原因と結果が真逆に見える。
確かにフランスの若年失業率は特に悪く、23.9%だが、これは、「原因」と指摘されている他ならぬフランスの「初期雇用契約」(CPE)反対運動が起きた年だ。
つまり、CPE反対運動が起きて雇用改革がつぶされて若年失業率が悪化したのではなく、若年失業率が悪化したからCPE反対運動が起きたのだ、と解釈するのが自然だろう。
だから池田氏の反論は最初から体をなしていない。
参考にUnemployment rates, by selected countriesでは、Unemployment rates among youths (16 to 24 years) are generally higher than other age groups. In 2007, youth unemployment rates in Australia, Canada, and the United States were similar, ranging from 9.4% to 10.5%. The lowest unemployment rates among youth were in the Netherlands (6.0%) and Japan (7.8%) while the highest were in Italy (20.6%), France (20.0%) and Sweden (19.1%)
とある。2007年は20.0%で2006年の23.9%に比べて若年失業率は若干改善している。
そもそもフランスの若年失業率はそれ以前から高かったのだからCPE反対運動で失業率が高くなったなんて言えない。2008年は恐らく若年失業率は高くなるかもしれないが、それは金融危機が原因に挙げられることだろう。CPE反対運動の要因はまだ数年経たないと判断できないはずだ。
池田氏のデータ利用のいい加減さは過去にもあったのを思い出した。OECD「日本の所得格差縮小」は2003年現在かで指摘したのだけれど、データが2003年現在なのに、注釈なしで引用し、まるで2008年現在のような印象を受けさせ「格差社会の幻想」などと書いていた。
更に過去を遡れば「分かりにくいIPCC第四次評価報告書」では、「1.8-4というbest estimateが公式の予測とされ、それ以外の極端な数字は欄外の参考データである」なんてトンデモないこと書かれていた。もちろん、あのグラフに欄外などない。全て都合よくデータを解釈する才能はいつもながら大したものだ。
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