社外取締役はノンワーキング・リッチの受皿か

昨年、ある会合に出席したら、今は社外監査役の某元高級官僚氏が挨拶でこう言った。「これからは皆さんも社外監査役になれるチャンスがありますよ」。「皆さん」の大部分はもう定年間際の一流企業の社員たちだ。
社外取締役@Wiki 株式会社の取締役であって、現在及び過去において、当該株式会社またはその子会社の代表取締役・業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人ではないものをいう(会社法2条15号)。
委員会設置会社における委員会では、その委員の過半数社外取締役である必要がある(会社法400条3項)。

建前としては、会社と直接利害関係のない人を取締役に置いてコンプライアンスとやらの遵守の監視という米国型コーポレートガバナンスの導入なのだろうけれど、本音はそんなところにはないだろう。団塊世代の退職で高級官僚のみならず、大会社幹部クラスも大量退職することになるが、かといって今までのように右肩上がりの成長時代ではないので暇な子会社に天下りするポストが不足している(官僚にとっては所轄民間企業は子会社みたいなものだ)。それなら換骨奪胎して社外取締役天下り先にすればいい。
天下りとは、退職した高級官僚が、関連する民間企業や独立行政法人国立大学法人特殊法人・公社・公団・団体などの高い職に就く(迎えられる)事を指して批判的に用いられる。民間企業の上位幹部が子会社の要職に就く際にも使われる場合がある。
のだけれど、社外取締役となると、関連官庁の会社だけでなく関連しない企業でも天下りできるので天下りの「流動性」が高まり、却って天下り先の受皿が大きくなるのではないか。
彼らの敵は、生産性を大きく上回る賃金をもらって終身雇用を保障されているノンワーキング・リッチなのだ。その最たるものが、退職後も第2、第3の職場まで「超終身雇用」を保障される高級官僚である。(池田信夫blog:日本は法治国家なのか)(ちなみにこのエントリー読んで元高級官僚氏の話を思い出した)
とあるけれど、この「超終身雇用」は表向きの天下り禁止の動きとは裏腹に逆に大きくなろうとしているのではないか。現実問題、社外取締役は免責事項もあり、仕事もほとんど楽ちんなので老後の美味しいポストだ。
つまり、団塊世代の退場とともに、それにかこつけて焼け太り的に更に老後すらもノンワーキング・リッチと非正規雇用の二極化が拡大する現象が起きつつあるということだ。正に、天下り後の再々就職を斡旋する渡りも公認されたばかりでなく制度も着々と整えられていたのだ。本当に官僚というのは自分たちの権益に関しては頭いい。
ちなみに上述のこの高級官僚氏も元の職場の官庁の所轄ではない民間企業の社外取締役に最近就任したばかり。もっとも他に元官庁所轄の東証1部上場企業の取締役もしっかり兼務しているが。
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