ヘブンズ・ドア

HDoor公式サイトマイケル・アリアス監督、長瀬智也福田麻由子長塚圭史和田聰宏黄川田将也大倉孝二田中泯三浦友和。後3日の命と宣告された28歳の勝人(長瀬智也)は、それまでずっと投げ遣りの人生だったらしく、そんなにショック受けない。むしろ、それまで以上に投げ遣りさがいや増して却って生きる活力を得たようにさえ見える。
同じく余命1ヶ月で7歳から入院生活している中学生の春海(福田麻由子)は、その長い閉じ篭り経験から勝人の投げ遣りな活力のようなものに惹かれたように見え、生き生きしてくる。福田麻由子の、あの投げ遣りさを突き抜けたような笑顔やはしゃぎっぷりは相当な演技力だ。
おかげで重い状況にかかわらず、どんどんコメディになっていくのに抵抗感がない。むしろ2人は世の中の重力から解き放たれて地上で宇宙遊泳しているようにも見える。
2人に対立する形で登場するカリスマ詐欺会社社長風の小久保(長塚圭史)の「戦争かマネーか」という哲学も、善意を否定する哲学も、死という時限爆弾の自爆テロリスト化した2人の前では全く色褪せる。長塚のそれなりに目立ち、それなりに控えめな演技がまたいい。きちんと2人を引き立てている。
映像的には、いきなり饅頭、さらにくつがえされて散乱した無数のレモン、春海の豪華ホテルスイートルームでの着替え、これらのシーンというのは、この映画の無重力性を表現しているように見えて楽しい。時々勝人が見舞われる発作は突然の重力のぶり返しのように見える。
刑事役の方も軽いノリで、メキシコ人経営のレストランに乗り込んで英語で「Where is 犯人?」とか、なぜ誘拐されたはずの春海が勝人のために薬局で強盗を働くのかについて「ヘルシンキ症候群なんですかね」なんてボケかますのも愉快。本当はストックホルム症候群なんだけれど。こういうギャグは日本人じゃないマイケル・アリアス監督ならではのセンスかもしれない。
ラスト。海を見に行きたいが出奔の動機だったはずなのに、最後になってやっと海岸の砂浜に腰を下ろし、海を見つめる2人。振り返れば最後の3日間は海を最後まで取っておいたために濃厚な時間となった。
勝人の上半身が超スローモーションでゆっくりゆっくり傾き、やがて春海の肩に勝人の頭が乗っかる。倒れるかかるというよりまるで宇宙船同士のドッキングのような接合だ。逝ってしまった勝人を肩で感じ、春海は初めて涙を流す。触れ込み通り「最高のエンディング」だ。
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