完成不況あるいは完了不況

(小倉秀夫弁護士風に)池田先生はご自身のブログ(池田信夫blog:コンプライアンスと法令遵守)のコメント欄に私のような建築の素人には不思議としか思えないことを記されています。 今回の建築基準法の改正は書類審査を厳格化しただけで、モラルハザードを防ぐ制度設計としてはナンセンスです。それより完成検査を厳格に行なって、耐震強度などの基準を満たしていなければ、その施工主と建築士の免許を取り消せばよい。廃業になるリスクをおかして手抜き工事を行なう業者はいない。ルールさえ十分詳細に決めれば、書類審査は廃止してもかまわない。
さて、この通りに行われれば一体どういうことになるのでしょう? 素人なりに考えてみました。
完成検査(実際には「完了検査」が正規の用語らしいです)だけを厳格にして書類審査は廃止となると、建築主は、自己責任で設計施工し、完了検査を受けることになります。
さて検査する側は、書類審査も中間検査もないので、事前に予備知識もなく、完成した建物を検査しなければならない。とすると、目視できる外面だけなら手間もかからないでしょうけれど、目に見えない鉄柱などの数や使用コンクリート量や構造の強度などはどうやって検査するんでしょう。池田先生は「厳格」な「完成検査」と仰っておられますから、当然建築主の書いた設計図を元に耐震構造を計算した上で検査に取り掛かると思われます。
ン? 冷静に考えれば、この時点で、廃止すべきだと主張なさっている「厳格な書類審査」をしていることにならないんでしょうか? 施工前に審査するか完成後に審査するかの違いしかないように思えます。いずれにしても書類審査抜きで「厳格な完成(完了)検査」は不可能と思われます。「書類審査は廃止してもかまわない」と言われても、完成後にまとめてやるだけの話で廃止することは不可能でしょう。
さらにその検査ですが、恐らくエックス線検査装置、音波検査装置、場合によっては、精密な重力感知計などを駆使して鋼鉄の使用総重量、コンクリートの総重量を算出し、適正に設計どおり、使用されていたか検査するのでしょう。いわば、体脂肪検査とか骨密度検査のようなものでしょうが、人と違って建物となると相当大掛かりな検査になると想像されます。
しかも建物が完成するたびにこのような物々しい検査装置を持ってこなければなりません。こんなことを避けるために中間検査という建築確認のプロセスがあるのだと素人なりに理解しています。
素人ですので詳細は存じませんが、こんなことすると、恐らく現状よりはるかに検査済証を得るためのコストが嵩み、引いては全体の建築コストが高くなり、例えばマンションなら価格が高くなり売れ行きが鈍ると思われます。
なぜ厳格な書類審査を施工前にするかと言えば、工事後に不正が見つかれば、折角完成した建物が水の泡になり、池田先生の身上である経済的合理性を著しく欠くと思われるからです。小さい玩具とか食品の検査とは訳が違うのですから。
完成検査前に既に売約済みとなると悲劇はいや増しそうです。建築主は返金に追われる上、その他、広告、宣伝費用も含めた建築にかけたコスト全てが損失となります。大手なら何とか耐えられるかもしれませんが中小の建設会社なら会社の存亡に関わる事態になると想像されます。
こうなると、「官製不況」どころの騒ぎでなく「完成不況」(正確を期せば「官僚不況」どころの騒ぎでなく「完了不況」でしょうが、どっちにしても語呂が合ってしまうのが痛いところです)になりかねません。建築主に課せられるリスクはより大きくなり、建設会社自主廃業が相次ぎ、失業率が増大するのではないでしょうか。
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