チェンジリング

changeling公式サイトクリント・イーストウッド監督、アンジェリーナ・ジョリージョン・マルコヴィッチエイミー・ライアン、コルム・フィオーレ、ジェフリー・ドノバン、マイケル・ケリー。1928年、暗黒の木曜日アメリカ経済が奈落の底に突き落とされる直前の実話に基づいたロサンゼルス市警の腐敗と出鱈目は今日の話としても通じそう。
行方不明から連れ戻された「息子」はたけくらべの柱の印より明らかに低く違う子供であるのは明々白々なのに、最初に結論ありきの医師は「精神的ショックで身の丈が縮むことも有り得る」などと馬鹿馬鹿しい詭弁で黙殺する。当時ではDNA鑑定は無理でもせめて血液鑑定ぐらいできたのじゃないか。しかも問答無用でシングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)を精神病院送りにする。ここまでやられるのは、当時のシングルマザーに対する偏見を反映したものだろう。実話であると知らなかったら「有り得ない」と思ってしまうほどの有り得なさ。
changelingとは「取替え子」の意味だが、別に「低脳」という意味もあるようだ。というか、-lingというのは軽蔑的意味があり、空気読んで保身のために良心を変節させる人間という意味もあるのかもしれない。その意味を冠せられているのはロス市警ということになる。
これはどこかの国の今日的状況によく似ている。バブル崩壊も官僚の腐敗も、政治の堕落も基本的に同じメカニズムで起きるもので、それがまた歴史は繰り返されるものだということが実感される。
背景にある猟奇殺人事件はゴードン・ノースコット事件で、実際には母親も共犯で、この手の少年趣味の顧客の仲介業もやっていたという。事件を白状した少年は司法取引で起訴されず、1991年まで生きていたという。犯人も自分自身で「自分は正常だ」「無罪だ」というのは、最近の日本でもよく見かけるパターン。実際に精神に異常がないと判断され、処刑されたのもどこかで聞いた最近のニュースのように見える。首吊り刑の現場シーンは「休暇」以上の生々しさ。しかし、落ちてくる死刑囚を支える役割の人はいなかった。
ストーリーの生々しさとともに当時のファッションに身を包んだアンジー。よくもまあ、こんなに変身できるものだ。ただ彼女の精神的強さだけは変わらない。
クリスティンは電話会社の優秀なオペレーターだが、電話会社内を社員がローラースケートで移動する姿は、ITによる迅速処理に置き換えればそのまんま現代に通じそう。技術は進歩するが、人間はちっとも進歩していない、ということが実感される映画ではあった。
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