ラ・ボエーム LA BOHEME

laboheme公式サイトジャコモ・プッチーニの歌劇より。ロバート・ドーンヘルム監督、アンナ・ネトレプコローランド・ビリャソン、ニコル・キャンベル、ジョージ・フォン・ベルゲン、ボアーズ・ダニエル、アドリアン・エレード、ステファーヌ・ドグー、ヴィタリ・コワリョフ。1830年代、パリの屋根裏部屋に住むボヘミアンのクリスマス・イブの、さながら真冬の夜の夢のような恋愛劇。
配役もロシア、メキシコや、黒人・韓国人の血の混じったニコル・キャンベルなど多国籍で無国籍のボヘミアンを演じる。他のフランス人とのコントラストが良く出ている。
生きた花の香り、空に浮かぶ雲。それらが結核に罹って死を仄かに予感している針子のミミ(アンナ・ネトレプコ)の幸福の全てだ。そこに「深い海のような愛」というどこかで聞いたような台詞のような出会いが訪れる。「ある愛の詩」も真冬の雪のニューヨーク・セントラルパークが舞台になった恋人の女性が白血病になる物語。恐らく「ラ・ボエーム」が原点なのだろう。
孤独で凍てつきそうなミミは、最初登場したときはかなりみすぼらしい雰囲気だが、コメディタッチのドラマが盛り上がるにつれてどんどん明るく美しくなっていく。一方の恋人になる詩人ロドルフォ(ローランド・ビリャソン)は風邪引いて痩せこけたパパイヤ鈴木といった風情で決してライアン・オニールのような2枚目じゃない。画家のマルチェッロ(ジョージ・フォン・ベルゲン)の方がいい男だ。薄幸のミミにはむしろお似合いで、真冬のパリにもよく似合っている。
圧倒的な声量と歌唱力で聴いているだけでも良いが、カメラワークも秀逸。2人と、ムゼッタ(二コル・キャベル)とマルチェッロのもう一つのコンビのやり取りが同時進行し、カメラが4人を遠近法で同時に捉える。遠景に主役の2人を配し、より2人の寂寥感が伝わってくる。
ラストで、それまで歌っていた役者が地声で台詞を喋り出す。文字通り物語が凍りつく瞬間、ミミ一人が横たわり、部屋の調度品も全てなくなり、何もない床だけになる。ここで、全ては孤独で哀れなミミの今際の夢だったのかとさえ思わせてしまう余韻を残して終わる。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログへ