THIS IS ENGLAND

tie公式サイト。マーク・ハーバート製作、シェーン・メドウズ監督、トーマス・ターグーズ、スティーヴン・グラハム、ジョー・ハートリー、アンドリュー・シム、ロザムンド・ハンソン。いじめられっ子が排外主義に取り込まれるプロセスをきめ細かに描いた1980年代のイギリスの青春。サッチャー首相も登場し、グローバリズム愛国心、不満の捌け口としての排外主義、レイシズムが錯綜した鬱屈が漂う。
フォークランド戦争で父を亡くしたショーン(トーマス・ターグーズ)は母子二人暮しの12歳。いじめられ、拗ね、パキスタン人が経営する雑貨屋でも立ち読みをとがめられ、「買わなくていい。二度と来るな」と追い出される。
同情してくれたスキンヘッドの仲間に受け入れられ、刑を終えて来たスキンヘッド仲間の年配のコンボ(スティーヴン・グラハム)に反骨神を見込まれて白人愛国主義グループに12歳の若さで入り、スキンヘッドになる。
350万人の外国人に職を奪われたイギリスを真っ当な国にしなければならぬというグループ運動家の集会にも参加し、雑貨店に再び現れたショーンは店主を「パキ」と罵倒する。チャールズ皇太子の次男ヘンリー王子が「パキ」と言って物議を醸したことで有名になったパキスタン人の蔑称だ。要するにパーティのために強盗したのだ。社会的弱者がさらにより社会的弱者を作って慰み物にする。「愛国心はならず者の最後の逃げ場」というイギリスの作家サミュエル・ジョンソン箴言を地で行くようなシーン。
一方のショーンの年上の恋人スメル(ロザムンド・ハンソン)のパンクぶりが凄い。何か言い知れぬ無国籍性の哀しみのようなものが漂っていて、およそ排外主義とは対極にある出で立ち。優しげというのでもなく、母性本能というのでもなく、ただそのままショーンを受け入れる態度が印象的。元々スキンヘッドの仲間はノンポリだった。
仲間の唯一の黒人ミルキー(アンドリュー・シム)がコンボの不満の捌け口として突然、「ニガー」とどやされ、半殺しにされることで、絶望したショーンは再び荒涼とした海岸に舞い戻る。うち捨てられた木製ボートの廃墟。孤独だった頃のショーンの遊び場だった場所だ。
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