日本の輸出依存度はG7の中で実質一番高い

アゴラ:<水準>と<振れ>は区別しよう−−池尾和人

日本の輸出依存度は小さいのに世界金融危機の影響が大きいことを疑問とする向きが、どうも少なくないようだ。しかし、そうした疑問の背景となっている「輸出依存度が小さいと外需の変化の影響を受けにくい」というような見方は、単に「平均概念」と「限界概念」を混同しているだけのようにしか思われない。
確かに、平均値としてみた日本の輸出依存度は、G7の中ではアメリカの次に低い(2007年時点では、G7平均が22%であるのに対して、日本は16%)。しかし、外需の変化の影響を考える場合には、平均レベルではなく、その変分の大きさをみる必要がある。今回の場合であれば、2000年代の初頭に10%程だった輸出依存度が16%まで上昇して、また元に戻るような変化が生じたのだから変分の絶対値は大きい。大きい変化が生じたのだから、影響が大きいのは当たり前である。

を読んで、今回の日本の外需急落の痛手が大きかったのは単に<振れ>の問題だけかなと思う。
調べてみると、まず事実認識として日本の輸出依存度は事実上G7の中で一番高いと思われる。
2007年のG7各国の輸出依存度は高い順にドイツ39.9%、カナダ29.2%、イタリア23.7%、フランス21.1%、日本16.0%、イギリス15.7%、アメリカ8.4%となっている。(参照)
これだけ見ると、日本は下から3番目で低い方にされてしまいそうだが、そうではない。
例えば1位のドイツの輸出相手国の7割程度は欧州の国で、EU域内輸出が6割ほどぐらいだろう。日本で言えば輸出というよりも、国内移出という感覚で、つまり北海道と近畿、九州と関東の間の移出も輸出にカウントしているようなものだ。大袈裟に言えば、お隣の国から車で来た買い物客に物を売れば輸出したことになる。欧州経済圏以外での輸出額を大雑把に3割とすれば輸出依存度は実質12%ということになる。日本より少ない。ましてや他の欧州国はもっと少ないことになる。ユーロ圏内取引を除いたユーロ圏全体輸出依存度は16.9%だ。
2位のカナダに至っては、その78.9%がアメリカというお隣さん。アメリカ以外の輸出依存度は何と6%になってしまう。
つまり、日本はG7の中で一番輸出依存度が高いのだ。
お隣さん同士なんて情緒的なこと言われても、という向きにはこの1年の為替レートを考えてみよう。外需急落ショック=輸出依存度×為替変動だろうから。
まずEUの大部分はユーロの共通通貨なので為替変動リスクがない。ユーロにペッグしている通貨も10カ国ある。ユーロとポンドもこの1年、1ユーロ=0.8〜0.95ポンドの範囲内で収まっていて変動はさして大きくない。欧州バブルの相対比較で変動しただけと見ていいだろう。アメリカドルとカナダドルでは1米ドル=1.0〜1.3カナダドルとかなり変動しているが、日本とは逆に米ドル高カナダドル安だ。これは資源バブル崩壊の影響だろう。つまり輸出は日本とは逆に為替がショックアブソーバーになっている。
そうすると、G7の中で一番外需急落の痛手を蒙ったのはやはり日本で当然ということになる。輸出依存度が高いうえに、為替は1米ドル=87〜110円とかなり変動した。今はその変動幅のほぼ中央ぐらいの1ドル=98円で依然円高状態。さらに1年前の1ドル=110円でも円高と騒がれていたから、1年以上の期間で見れば池尾教授の言う<振れ>の効果と相まって痛手はもっと大きいことになる。
恐ろしいことに2007年の日本の輸出依存度は1985年のプラザ合意当時の水準をも上回っていたのだ。(参照)これでは、リーマン・ショックによる外需断層で痛手を蒙るのは無理ない。あの前川レポート内需拡大策とは結局なんだったのか。プラザ合意当時の円ドル為替レートを考えれば、この数字は凄いが実効為替レートから見れば、2007年は当時と大体同じだったので、そう驚くことはない。アメリカ外需依存は当時と比べて確実に低下しているから。
そうすると、日本は今後も基本的に外需依存体質を維持しつつ、中身がアメリカ一辺倒から徐々にデカップリング効果で円ドルレートをそれほど気にしないで済む時代になるということだろうか。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 経済ブログへ