午後8時1分以内に結論が出る選挙番組

選挙投票日の出口調査は禁止すべきではないか?(山崎元のマルチスコープ)

選挙の開票速報は、自分が立候補したわけでもなければ、競馬のように馬券を買っているわけでもないのに興奮を覚えながら画面の前に釘付けになる天然の娯楽番組だが、近年、「当確」が出るのが非常に早くなっている。有力候補の場合、開票の第一報と共に「当確」が出ることが珍しくない。テレビ的に、当確は早い方が価値がある。各局は当確の早打ちために競争していると見ても間違いではないだろう。

私も前々から「天然の娯楽番組」と思っていた。なのに、テレビ局はなぜ高い経費を注ぎ込んでわざわざ人気娯楽番組を興醒めさせ、視聴率を下げるようなことをするのかと。これまでの例ではほぼ午後8時1分以内に大勢が判明し、後は個々の注目選挙区の注目候補の当落と、テレビ局のそれに伴う判断ミスぐらいしか興味がなくなる。プロ野球の日本シリーズやメジャーリーグワールドシリーズ中継で「プレーボール」と告げられた途端、勝負の結果が判明するようなものだ。言わば、これ全体最適部分最適の問題に似てなくもない。各テレビ局が各々部分最適を求めて視聴率競争に走った結果、テレビ全体の視聴率は下がって全体最適が損なわれるというような。
こういうことを最初に本格的にやったのは、記憶する限り数十年前のNHKで、当時の最新のコンピュータを駆使してコンピュータグラフィックで最終予想をしていた。開票率1%、時には0%で「当選」を出すようになったのもその頃だろう。なんで視聴者が興醒めすることを血眼になってやるのか。およそ分別も何もあったものじゃない。
そりゃあ、正確でしょうよ。正確だから困るんだよ。多分、正確さ故にかなりの視聴者はテレビのスイッチを切るだろう。まあ、注目の候補と言ったって所詮、有名プロスポーツマンのパフォーマンスには叶わないし、そこまで付き合う視聴者はどんどん限られてくる。
しかも、最近は候補者や選挙結果そのものより、それを評するコメンテーターがどんなバカなコメントするのかという興味で持っているところがある。つまり、最初の1分だけが選挙のニュースで、午後8時2分からは実質、「結果」を基にしたスポーツ・ワイドショー番組になってしまう。
というわけで山崎氏は、

テレビ的に、当確は早い方が価値がある。

というのは、視聴者から見れば、そうではないと思う。あくまで「他局に負けるな」というメンツをかけたテレビ間競争を視聴者に押し付けているだけだ。よく日本経済で語られる消費者軽視、供給サイド側本位の経済と基本同じ構造だ。
最近、やっと不恰好な規格外野菜が店頭に並ぶ動きが出てきたけれど、「規格外だと消費者にそっぽを向かれる」というのは真っ赤な嘘で、規格外を市場に出すと売り上げ単価が減るから供給者側が談合して出していなかっただけだ。そもそも出してもいないのになぜ売れないと分かるのか。
一方でテレビ局は出してくれとも言っていない出口調査という擬似選挙結果を出してくる。消費者無視も甚だしい。かと言って、選管発表通りにバカ正直に報道していれば他局にチャンネルを回される。となると、やはり公職選挙法に手を加えて出口調査を禁止するしかない。行き過ぎたものには規制が必要なのは、過熱した市場も過熱報道も変わりない。
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