池田信夫氏の絶対的貧困率の見方についての誤解

池田信夫 blog:「貧困率」についての誤解

朝日新聞論説委員のレベルの低さに衝撃を受けた。日本の貧困率OECD諸国で第4位だということは、当ブログでも紹介したとおり5年前から周知の事実で、政府が「それに目を背けてきた」わけではない。大した意味がないから、特に問題にしなかっただけだ。
鳩山首相もこの数字について「大変ひどい数字だ。何でこんな日本にしてしまったとの思いの方も多いだろう」とコメントしたそうだが、彼はその意味がわかっているのだろうか。OECDの発表しているのは相対的貧困率で、これは国内の家計所得の中央値(メディアン)の半分に満たない世帯の比率を示す指標にすぎない。絶対的貧困率でみると、次の図のように、日本の下位20%の人々の所得(紫色の面積)は最大である。

地図の元データを見ると、世界地図で表されている国の面積の大きさというのは、国民トータルの下位20%の人々の総所得であって、一人当たりの下位20%の人々の所得ではない。そんなことはあの人口のやたら多く、一人当たりの所得が低い中国やインドがやたらでかく、人口が少なく所得が高いオーストラリアがやたら小さいことからすぐ判断できる。下位20%の総所得で絶対貧困率を比較してもナンセンスだろう。この地図の作成者にも罪があるが、池田信夫氏のデータの見方のレベルの低さに衝撃を受けたよ。まあ、めんどい、という事情もあるのかもしれないが。
総所得ベースでみると、日本は3630億米ドル、一人当たりだと2847ドルとある。しかも、これ、ちょっと変だ。3630億ドルを単純に全人口で割ったものだが、下位20%なのだから全人口の5分の1で割らなければならないはずだ。ということは、実際には14235ドルでなければならないはずだ。現在の為替レートだと128万円くらい。まあ、他国との比較の指標と考えれば大勢に影響ないが、それにしてもいい加減なデータだ。ついでにケチつければ このデータは2002年のもので今から7年前のものだ。ふる!。
日本の一人当たり下位20%層は世界全体のそれの5.7倍だ。他の地域全部との比較でも6.6倍ぐらいだ。だから池田氏が7倍以上とリンク先の記事をそのまま引用するのもいかにも軽率だ。
日本の貧困層はもっと“豊か”でないはずだ。実際、一人当たりで日本に勝っているのは小国のルクセンブルクだけだけれど、あくまで7年前の話だ。
まあ、これをもって、相対的貧困率が問題じゃないとは言えず、購買力平価とか、可処分所得とか、最近の経済状況の変化とか、ご近所との比較とか、色々考えないと意味ないのだけれど、めんどいから省略。
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