逆GDPギャップ?

池田信夫氏がまた変な言葉を使っている。
デフレについての補足

日銀の水野審議委員のいうように、逆GDPギャップが発生している可能性がある。同様の問題はアメリカでも指摘されており、次の図のようにGDP>潜在GDPになっている可能性がある。

そのを見ると、2008年9月のリーマンショックを起点にして、Perceived Potential GDP、実際のGDP、潜在GDPの3本の折れ線グラフが示されているのだけれど、そもそもこの図は池田氏が言うように「GDP>潜在GDP」を絶対ベースで示しているわけではない。リーマンショックを起点にして潜在GDPの下落率が実際のGDPの下落率を上回っているということだ。
これは、「実際の経済成長率>潜在成長率」の状態を示している。潜在成長率と実際の成長率の差はGDPギャップと呼ばれるが、GDPギャップ=(現実のGDP−潜在GDP)÷潜在GDPで現される。
普通、潜在GDPと言う場合、労働力、資本を目一杯使うことによって実現できるであろうGDPなので、普通は常に、GDPギャップはマイナスのはずだ。
ところで、その潜在GDPの定義も変更されている。日銀はこれまでの定義から、2006年春に潜在GDPの定義を変更していたようだ。

潜在GDPの概念にも大きく分けて2通りの考え方がある。ひとつは、労働、資本をフル稼働させた場合のGDP(=最大概念の潜在GDP)、もうひとつは労働、資本が過去の平均的な稼動状態にある時のGDP(=平均概念の潜在GDP)である。最大概念の潜在GDPを使うと、GDPギャップは常にマイナスの値をとるのに対し、平均概念の潜在GDPを使うと、労働、資本が平均的な稼動状態にあるときにGDPギャップはゼロとなり、それよりも稼働率が高ければプラス、低ければマイナスとなる。
日銀はこの春、潜在GDPの再推計を行ったが、その際に潜在GDPの概念をそれまでの「最大概念」に基づくものから、国際的に主流となっている「平均概念」に基づくものに変更した。日銀が潜在GDPの概念を変更した背景には、GDPギャップがマイナスのままでゼロ金利を解除するというのは説得力に欠けるという判断も働いたものと思われる。

(参照)ということなのだ。この「平均潜在GDP」なら、リーマンショック後、GDPギャップがプラスに当然なっているだろうさ。一体、池田氏が潜在GDPをどっちの定義で使っているか知らないが、いずれにしても「逆GDPギャップ」なんて言われても、ワケワカメで、なんだかなあ、である。池田氏が引用している水野温氏日銀審議委員の言っているのは「逆GDPギャップ」なんかじゃなくて「マイナスの需給ギャップ」であり、その意味はデフレ・ギャップのことだ。すなわち「供給量>需要量」という当たり前のことを言っているに過ぎないのだ。池田氏の言っている「逆GDPギャップ」という意味不明な概念とは何の関係もない。恐らく引用元に書かれているnegative output gapの直訳なんだろうが、negative output gapというのは潜在GDPより実際のGDPが低いことだから、意味が真逆だ。実際、

what I think is a negative output gap is in reality a positive output gap(私の考えでは、negative output gapといわれるものは、実際にはpositive output gapだ)

と書かれている。つまりGDPギャップが従来の潜在GDP概念ではマイナスでも平均ベースの潜在GDPで見れば、プラスになっている、ということだろう。
わざわざ「逆GDPギャップ」などとへんてこりんな言葉使わなくても、「GDPギャップがプラスになっている」と言えばいいのだ。「プラス」なんてポジティブなイメージがあるから誤解を生むというのなら、水野審議委員に見習って単に「デフレ・ギャップになっている」と言えばいいのだ。なぜ、そう言わないかと言えば、恐らく、勝間和代氏の「デフレ脱却」論を否定する論考で「デフレギャップ」という言葉を使えば、イメージ的にマズイと「潜在意識」が顕在意識を上回っているからだろうか。もっと分かりやすく正確に書いてもらいたいものだ。
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