なぜ藤末健三議員のもっと痛い点を見逃すのか

民主党参議院議員ふじすえ健三公式ウェブサイト:公開会社法 本格議論進むがえらくバッシングされているのだけれど、誰も貼られている「日本企業の利益と配当額」の大きなグラフについて言及していないようだ。

最近のあまりにも株主を重視しすぎた風潮に喝を入れたいです。
今回の公開会社法にて、被雇用者をガバナンスに反映させることにより、
労働分配率を上げる効果も期待できます。
下記は日本銀行の資料ですが、上場企業の利益の3分の1が配当に回っているというデータもあります。

とある。もっぱら、批判は「最近のあまりにも株主を重視しすぎた風潮」に集中しているようなのだけれど、その下の記述の方がもっと気になる。
労働分配率に比べて配当性向は33%で多すぎるのじゃないかと言いたいようだ。けれど、歴史的に見てこの水準はそんなに高くない。グラフを見れば明らかのように実は配当性向は不況時に高くなり、好況時に低くなる。実際、東証1部上場企業の配当性向は、たとえばバブル末期の1989年度は27%だったが、バブル崩壊後の1994年度にはなんと83%に跳ね上がった。(参照)
つまり、わざわざ大きなグラフで示された「株主重視」の例も実は例になっていない。
これは労働分配率にしても同じで不況時には高くなる傾向になる。そりゃそうだろう。不況になれば、そもそも分母の税引後当期利益が分子の配当が減配する以上にガクンと減るからだ。3分の1くらいで「株主重視」と言われても、実態にあってない。
そもそもこのグラフ、2006年までで、3分の1の時は配当性向が低い時のものだ。当期利益よりも配当額の方がはるかに伸び率が低い。
だから藤末議員を擁護されている「会社は本当に株主のものか?という疑問に答える本」の、

まず「最近の余りにも株主を重視しすぎた風潮」というところだが、ここでは比較対象は、他の欧米諸国と比べてるんではなく、「日本の昔に比べて」ってことを言ってるのだと思う。

というのもお角違いな気がする。昔の日本も、知る限り1980年代は配当性向30%台だった。
これに対する、「「株式」会社は株主のもの」という反論も、そもそも藤末議員が例示した「株主重視」自体が根も葉もないことだと自ら証明しているので真正面から批判する価値があるのかと思える。
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