成長戦略なき成長戦略論者

「第三極」への提言 - 池田信夫(アゴラ)

ブレア英元首相の有名な言葉にならえば、今の日本に必要なものは3つある:成長、成長、そして成長である。経済が立ち直らない限り、福祉も財政再建も行き詰まる。

で、どうやって成長するのかと言えば、規制緩和イノベーションらしい。でもあんまり具体案は聞かない。この人の場合、せいぜい周波数オークションぐらいだろうか。
具体案があまり見かけないのも無理はない。日本でこれからも経済成長を期待するのは恐ろしく難しいからだ。
1.平均年齢が今後も上がり、労働者人口は減り続ける。
2.既に一人当たりベースで中国の10倍もGDPを産出し続けている。
仮に年2%成長でも、それを達成するためには単純計算で中国人1人が20%成長を達成するくらいしんどいことになる。日本のように1人当たりのGDPが大きいとそれを維持するだけでも大変だ。そのことは樹齢何百年の大木と、樹齢数十年の若木を連想しても理解できる。若木は維持費が少なくて済むのでその分、成長できる。それを無理矢理成長させるとなると、限りなく奴隷制度に近い状態にしなければならない。日本には奴隷の代わりのような旧植民地もないし、資源も土地もない。イノベーションと言っても、これはかなり言語の問題が付き纏い、言うほどに簡単じゃない。せいぜい成長セクターのアジアの経済成長のお裾分けにあずかれば御の字で、それ以上望んでも却って不幸になるだけだろう。
イギリスなどのように旧植民地がいっぱいあれば、資本の投資先でも強い立場にあり、配当生活ができる。しかし、そのイギリスなどヨーロッパ勢は調子に乗り過ぎて、今は惨憺たる状態。アイスランドアイルランドハンガリーギリシャポルトガル、スペインと雪崩のようなソブリンリスクに苛まれている。結局、無理な「成長戦略」のツケを払わされているのだ。
それに比べればまだ日本はましなのだ。政治がヘタレだとか、なんのかんのと言っても、失業率はそれでも5%台と超低い。自国通貨の価値も右肩上がり傾向だ。「成長、成長、そして成長」なんて悪い冗談なのだ。
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