クローズアップ現代「無料ビジネス」の如何わしさ

NHKクローズアップ現代3月10日「タダでもうける?!“無料ビジネス”の舞台裏」のお題目は、

無料で読める電子書籍、無料で話せる国際電話、無料で楽しめる携帯ゲーム、無料で話題を呼ぶ最新の電子カルテシステム...。 今、一体どのように採算が取れているのか理解しがたいほどの"無料ビジネス"が急速に広がり、注目を集めている。これらのビジネスモデルは、従来のような広告収入で成り立つフリーペーパーや、最終商品に価格転嫁するお試しサンプルなどとは決定的に異なり、"タダ"から巨額の冨を生み出すことに成功しているのだ。その背景にあるのが、金融危機以降の新たな経済学として注目される最新の「行動経済学」。人間の複雑で不合理的な心理を経済学に取り入れた分野だ。今後も成長を続けると言われ、様々な業種に影響を及ぼすと予想される"無料ビジネス"の不思議な舞台裏を探り、その将来を考える。

紹介された携帯ゲームは、番組の能書きとは裏腹にお試しサンプルと何ら変わらない。ただお試しサンプルに相当する無料ゲームだけで楽しめるから試供品のように見えないだけだ。ちなみに、この釣りゲームは文字通り釣りで、表看板が無料だと、中の商品に値段が書いてあってもついつい無料ゲームの中のポイントと錯覚してしまうだろう。
同じく番組で紹介された無料電子カルテに至っては、無料なのはユーザーではなく電子カルテ提供側だと思えて来る。提供側は電子カルテを無料で提供する代わりにカルテに書かれた診断情報をただでせしめるのだから。これまた名簿売買ビジネスと変わらないプライバシー侵害ビジネスだ。
プライバシーの問題はさておき、無料ということは、無料という幻惑的な数字で契約を電子カルテ提供側に有利な0円という固定価格にしてしまうことだ。本来なら診断情報の値段も相場で決められなければいけないはずなのに、市場原理が働かなくなってしまう。
相場が動けば逆に電子カルテ提供者がユーザーに支払わなければならないケースだってあるだろう。情報を提供する患者側にも診察料を割り引くなどの形で見返りがなければ不当だ。そのようなことが全く配慮されないなら、電子カルテの提供側は、原料を無料という偽りの大義名分の下に市場を独占してしまうことになる。
行動経済学者のダン・アリエリー(Dan Ariely)氏の高いチョコと安物チョコを並べ、どちらを人々が選ぶかのチョコレート実験。27円のチョコと 2円のチョコ、26円のチョコと1円のチョコでは、高い方が売れたが、25円のチョコと0円のチョコでは形成逆転し、0円の方が7割ぐらい支持を得たと紹介されていた。同じ25円の差なのに0円になった途端、なぜ逆転現象が起きるのかというのがミソ。ちなみにダン・アリエリー氏は2008年のイグノーベル賞医学賞受賞者で、受賞理由は

高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効力が高いことを示したことに対して。

とのこと。経済学者なのに医学賞というのが香ばしい。
しかし、この実験自体、テレビで紹介された限りでは、普通に予測できる実験だろう。実際の実験では1円単位じゃないだろうから、多分1セント単位か1ドル単位だろうか。仮に1セント単位として0セントだと1セントにはない飛躍的なメリットが起きる。
財布取り出す面倒が省ける。
それに26セントと1セントでは、金額的に見れば26倍でも所有者から見れば誤差の範囲だろう。仮に被験者がホームレスだったら当然結果は違ったものになっていたろうし、金額が26ドルvs.1ドルならまた結果が違ったものになっていたろう。
よって、アリエリー氏がテレビで言っていた無料の不合理な刺激、効能というのは、ちょっと言い過ぎな感じがする。
同氏の、ソファーを降ろしてもらうのに、カネを支払うのと、ただ「お願いします」の無報酬とでは人々はどちらが協力的かの実験では、無報酬派が有償派に勝ったという。これも、そんな程度のちょっとした親切仕事ならいちいちカネ儲けようとは思わないし、カネをちらつかせると却って如何わしさを覚えて「関りたくない」という意識があるのではないか。これも無料の効能というものじゃないだろう。
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