消費税増税は景気に影響しないという笑い話

消費税の引き上げはもう先送りできない(エコノMIX異論正論 池田信夫)

こういうとき「選挙で負ける」というのが恥ずかしい政治家が持ち出すのが「不況のとき増税すると景気が悪化する」という言い訳だが、これは嘘である。18日の財政審議会で井堀利宏氏(東大教授)が指摘したように、1997年に消費税率を上げたことで「景気が腰折れした」という俗説は、実証研究では棄却されている。
 97年4〜6月期に消費が落ち込んだのは、1〜3月期の駆け込み需要の反動で、7〜9月期には回復した。98年1〜3月期に大きく落ち込んだのは、97年11月の北海道拓殖銀行山一証券の破綻を発端とする信用不安が主要な原因である。長期的には、増税によって財政が健全化するという信頼感が高まれば、人々が消費を増やす効果もある。

実際には1997年の消費税増税は3%から5%へという誤差の範囲のような引き上げで、しかも「当分上げません」という条件付きだった。しかし、今想定されている消費税増税は最低でも10%、多ければ25%以上なんて話もある。同じ消費税引き上げでも次元が異なる世界だ。97年の事例など全く参考にならない。
同じことが1年前にも言われている。
消費税の段階的増税を - 池田信夫

先日の記事で法人税の減税を提言しましたが、きのうの日経新聞の「経済教室」で、井堀利宏氏も法人税の減税を求めています。それと同時に彼が提唱しているのは、消費税の増税です。不況に増税するというのは一見、おかしな政策のようにみえますが、実は消費増税は消費を促進する効果があるのです。
この図は、1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられたときの実質GDP成長率です。増税の決まった96年10〜12月期に、増税前の駆け込み需要でGDPが大きく上がり、増税後の97年4〜6月期にその反動でマイナス成長になっています。これを「橋本政権の増税で不況が悪化した」などというのは誤りで、10〜12月期には通常の値に戻っています(98年に下がったのは信用不安が原因)。
したがって、たとえば「消費税率を2020年まで毎年1%ずつ上げる」と決めれば、一種の人為的インフレを起こすことができ、消費が刺激されます。この増税と同時に法人税所得税を引き下げ、税収中立にすればよいのです。消費税にインボイスを導入して捕捉率を高めれば、税収は増えるでしょう。消費税は逆進的な性格をもっているので、所得分配の不平等化を防ぐには、負の所得税(給付つき税額控除)で最低所得保障を引き上げればよい。
所得分配の不公平が最大なのは、実は現在世代と将来世代です。したがって財政を健全化することは、若い世代の将来への不安を減らし、消費を増やす効果があります。大事なのは、井堀氏もいうように、税を短期的なバラマキとして使うのではなく、長期的な資源配分の効率化の手段として使うことです。.

ということを本当にやったら2020年に消費税は15%になる。
池田大先生の理論だと向こう10年間ずっと“駆け込み需要”が発生して2020年まで消費が刺激されるのだという。
でも、10年間も続く駆け込み需要なんて普通に形容矛盾で“駆け込み”とは言わんだろう(笑)。
一般国民はそこまで馬鹿じゃないから、せいぜい年度末に“ミニ駆け込み需要”が発生し、新年度に入って“ミニ駆け込みの反動”が繰り返されるだろう。そして、年が経るにつれて“需要”より“反動”が大きくなる。つまり、消費の右肩下がりだ。消費者は10年後には消費税が15%に上がると知っており、真綿で首を絞められるのだから、手をこまねいていれば次第に息ができなくなることを予想するだろう。
これで景気に影響が出ないとしたら奇跡だ。所得税減税で税収の中立をするということは、勤労者世代にはトータルでプラスと思えるが、勤労者だって若死しない限り、いずれは退職後の不利な側になることも予想する。しかも、有利になる勤労世代は今後ますます人口全体の比率が下がることも分かっている。
心理学でウェーバーの法則というものがあり、変化の度合いが小さければ、変化に対する反応も小さくなるが、人間は10年後を予想し、自分の定年後も予想するので、この増税モデルでは池田大先生が予想するほど消費は伸びないし、人生の先読みによる委縮の方が大きいと思われるからだ。簡単に言えば、消費は一歩前進二歩後退の繰り返しが今後10年続くということ。まあ、無駄な消費がなくなって環境には優しく、同じ2020年目標の鳩山イニシアチブははからずも実現するかもしれないが、まさか地球温暖化対策に歩調を合わせて言っているわけでもあるまい。
何がおかしいかって、これ、何かに似ているなあと思ったら当の池田大先生が否定しているインフレターゲットと実質同じ理屈だということ。バラマキするかバラ集めするかの違いだけだ。
そして、国はマネーの最も非効率な使い手なので、集めたマネーの無駄遣いは今後も終わらない。福祉に回せば無駄じゃないという幻想があるかもしれないが、福祉ほど無駄遣いの率が多い事業はないだろう。「福祉」と名が付けば、反対されにくいからチェックが甘くなり、益々無駄な予算が多くなる。結果、国債残高も減らない。消費漸減の結果、GDPも伸び悩むだろうからGDPに対する国債残高の比率はさらに上がるだろう。
消費税増税をちらつかせた菅直人財務相もすっかり財務官僚に洗脳されたようだが、今、無駄な一般会計や特別会計を洗い出さず、消費税増税で糊塗されれば、先般行われた事業仕分けを中途半端に済ませる口実を与えるようなものだ。
今の日本経済は癌細胞に栄養を与えている状態で既に癌細胞は900兆円を超えている。この調子で癌細胞が全身に転移すれば日本経済は本当にお陀仏になるだろう。歳入増では借金は減らない。癌細胞を切除しない限り。
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