もう日本語学んでまで出稼ぎに来る意味がなくなりつつある

inspired by H-Yamaguchi.net:もう日本語は守ってくれない

日本語は言語障壁、外国人から日本と日本人の市場を「守る」「防壁」のような存在と認識されていた。日本語の壁があるから、外国人が日本で働く、特に接客のような仕事をするのはなかなか難しいだろう、と。
それがもはや通用しないのだな、というのが改めての感想。その他の障壁はともかく、少なくとも日本語は、かつて考えられていたほどの障壁ではないということが明らかになったわけだ。世界における日本のプレゼンスが上がった結果でもあろうから、嘆く必要はないとも思うが、国内でドメスティックな仕事をする日本人にとっては、これは少なくとも当面、リスク要因、というか報酬ダウン要因になりうるわけで。

まあ、この問題は似たような視点で「中国人“技能研修”を厳密運用すれば派遣村必要なかったかも」でも取り上げたので、復習の意味をこめてとりあえず中国に例を絞ってみる。
日本のGDPは今年中国に抜かれるのは必至なわけだけれど、それでも一人当たりのGDPではまだ日本人は中国人の10倍多い。
ということは、物凄い勢いで発展していても中国からの出稼ぎは今後も続くように思われる。でも、本当のところ、どうなんだろう。
純化して仮に中国人が本国にとどまって100元の所得を得られるとすると、同じ仕事を日本ですれば10倍の1000元得られることになる。あくまで単純化した話。
けれど、これは日本に行けばずっと10倍儲けられることではない。日本に滞在している以上、日本での生活費も日本並みに高いはず。その生活費を中国では100元稼ぐのに80元出費しなければならないとし、日本での生活費は10倍の800元とする。
とすると、貯金に回せるカネは中国国内派は20元、日本出稼ぎ派は200元。相変わらず10倍だ。
しかし、中国政府が所得倍増計画を打ち出したことだし、日本の民主党も成長戦略でアジアGDP倍増による「アジア内需」なんて言い出した昨今、本当に近いうちに所得倍増が実現したらどうなるのか。それでも5倍稼げるじゃん、というのは甘い。
そうすると、中国国内派は所得が200元、生活費はインフレを加味して1.5倍になったと仮定すると120元。差し引きの貯金可能額はは80元で4倍になる。
一方の日本出稼ぎ派は所得も上がらずインフレもないとして貯金可能額は200元のまんま。10倍だったのが2.5倍になってしまった。
しかも、将来的にも人民元切り上げによる人民元高円安の公算が高い。仮に対円で人民元が1割高くなれば日本で稼いだ金は中国に送金しても1割減じる。とすると、180元vs.80元となり、貯金可能額格差は2.25倍にまで縮まる。10倍とは偉い違いだ。しかも、所得がさらに3倍になったら、さらにさらに縮んでしまう。
それでもまだまだ日本で稼いだ方が美味しそうと思える向きもあるかもしれないが、出稼ぎ派は出稼ぎに来るまでにそれなりにコストを支払っている。まず日本語を習得するためのコスト。さらに日本に来るには仲介業者というのがいるらしく、そのピンハネ支払いもまた大きな負担になる。また日本で単純労働者として働くためには名目上の研修が必要でそのための時間コストも馬鹿にならない。
ちょっと考えてしまうのではないか。少なくともこれから日本に出稼ぎしようとしている中国人は。自国は日の出の勢いで経済発展し、賃金も凄い勢いで上がっているのに、わざわざ苦労して日本語を覚えて給料上がりそうにない国に行きたいと思うだろうか。そんなことするより、中国国内で中国版「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」していた方が賃金も上がるし出世も早い、長期的には絶対得と考えた方が勝ち組になりやしないか。
日本も貧しかった昔はブラジルなどに出稼ぎに行った時代があった。60年代の高度成長期前だったが。今は日系ブラジル人が日本に出稼ぎに来ている時代だ。
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