世界一元気な日本が「元気のない日本」に見えてしまう理由

日本は世界一元気な国である。住んでいて実感する。
日本人の平均寿命、男性79.59歳・女性(日経)

日本人の平均寿命は女性が86.44歳、男性が79.59歳でいずれも4年連続で過去最高を更新したことが26日、厚生労働省の2009年「簡易生命表」で分かった。心疾患や肺炎による死亡率が改善し、前年より女性は0.39歳、男性も0.3歳延びた。主要国のなかで女性は25年連続で長寿世界一となったが、男性は08年の4位から5位に後退した。
国際比較では、女性の2位は香港の86.1(09年)、3位はフランスの84.5歳(09年)。男性の1位はカタールの81歳(07年)、2位は香港の79.8歳(09年)、3位はアイスランドとスイスの79.7(アイスランドは09年、スイスは08年)だった。

日本が突出して世界一元気な国だということが改めて確認された。男性は4位から5位に後退したと言っても、上位はみんな小国であり、実質男性も長寿世界一だ。1億3000万人もいる人口大国では追随を許さない物凄さである。
寿命のことじゃない、経済が元気じゃないのだとツッコミが入りそうだが、長寿は経済とも重要な関りを持っている。なぜなら、
カネの価値はカネの使用可能時間(寿命)に比例して高まる
のだ。それを証明しているのは他ならぬアルバート・アインシュタインである。
アインシュタインは累進課税を正当化する

2.人間の寿命が有限である限り、時間とともに貨幣の価値は小さくなる(価値保存機能の逓減)。例えば、寿命が後1日に迫ったとすると、もはや3億円持っている人間と300万どころか3000円しか持っていない人間との間で貨幣価値格差は事実上存在しない。この例えは、見込み寿命が後1年、後10年でも有効だ。

この法則を逆に応用すれば、平均寿命が延びれば延びるほど、その人が所有している貨幣価値保存機能の逓減が先延ばしされる分、貨幣価値が高まるということになる(ここでは相続の問題は無視する。相続人だって大抵は日本人で平均余命が長い)。
つまり、同じ年齢の日本人が持っている87万円とアメリカ人が持っている1万ドルは為替換算では等価だが、アインシュタイン流“時空の歪み”の影響で、
日本人の87万円>アメリカ人の1万ドル
という不等式が成り立つ。
とすると、国富というのは単にGDPではなく、
GDP×平均寿命
で表さなければならないはずだ。
今の日本円は円高の上に長寿高だから、ドルやユーロの体たらくを尻目に一人勝ちの世界一の通貨なのだ。そんな自国通貨を持つ国が元気でない訳がない。それを元気でないと思うのは錯覚に過ぎない。
ところが、世の中はどうも、そろいもそろって錯覚しているようなのだ。まことに不思議な国だ。
特別枠は「1兆円を相当超える」規模=11年度概算要求基準原案(ロイター)

閣僚委でまとめた概要は、(1)「歳出の大枠」71兆円の範囲内で、政策効果の高い新たな政策に重点配分するために「元気な日本復活」特別枠を設ける、(2)特別枠では、マニフェストの実現、デフレ脱却・経済成長の実現、国民生活の安定・安心、新しい公共の推進など、元気な日本を復活させるための施策に重点配分する、(3)特別枠の規模は1兆円を相当程度超えるものとする、(4)重点的戦略的な予算組み替えの土台作りとして、各省庁の要求額は、2010年度当初予算比10%削減とする──など。 

世界一元気な国に「元気な日本復活」のために歳出に特別枠を設けるなどというのは、冗談にもほどがある。政府自体は日本が世界一元気な国だということに気付いておらず、元気がないと思い込んでいるのだ。
デフレ脱却って、いつの間にかデフレが悪の代名詞としてデフォルト化してしまったが、そもそも日本はデフレというよりノン・インフレの国というのが正確なところだ。
それはさて置き、著名な女性経済評論家(勝間和代という人だが)が「先進国の中で日本だけがリーマンショック後もデフレが続いている」と言って、1ドル=120円まで円安にしろ、と主張していたが、その間、日本だけが自国通貨の価値を上げていたのだから当たり前の話で、日本が駄目なのでもなんでもない。日本が先進国の中で一人勝ちだから“デフレ”になっているに過ぎない。
“デフレ”のもう一つの要因が、その世界一の長寿国であるということだ。
ライフサイクル仮説(Intertemporal consumption)を悪用して「消費税は逆進的ではない - 池田信夫」という珍説まで出ている昨今の日本だが、ライフサイクル仮説が日本経済に与える影響は、実は“長寿デフレ”だ。死ぬまでに所得を全て使い切ると人々が考えれば、長寿になればなるほど消費を均してより少なく消費しようとする。その結果、見かけの“需要不足”が起きて“長寿デフレ”が起きる。
原因が「世界一の長寿国」なのだから、これは“良いデフレ”だ。それを勘違いして「元気のない日本」と考えるのは、いまだに政府にもエコノミストにも古典的ニュートン力学の信奉者しかいないということになる。まあ、このことは日本に限ったことじゃないのだけれど、これ以上訳のわからない“成長戦略”なんかを策定された日には、過労死や自殺者がさらに増えて却ってアインシュタイン相対性理論に基づいた世界一の一人当たりの実質GDPを逓減させるだけだろう。
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