元素記号表とアルファベット、生物と言葉

ヒ素食べる細菌、NASAなど発見 生物の「常識」覆す(朝日)

猛毒のヒ素を「食べる」細菌を、米航空宇宙局(NASA)などの研究グループが見つけた。生物が生命を維持して増えるために、炭素や水素、窒素、酸素、リン、硫黄の「6元素」が欠かせないが、この細菌はリンの代わりにヒ素をDNAの中に取り込んでいた。これまでの「生物学の常識」を覆す発見といえそうだ。

この「猛毒のヒ素」だからこのニュースに余計にインパクトを与えた気がする。けれど、この「猛毒」という言葉自体、バイアスがかかっているわけで、それはあくまで人間中心主義的世界観から見れば、の条件付き猛毒だ。ヒ素からすれば「俺はヒ素であって猛毒じゃない。勝手に決め付けるな。元素差別反対!」というものだろう。
我々人間はヒ素を猛毒と思い込んでいるが、それは人間の身体というテクストの中で猛毒であるだけで、そのテクストから独立してヒ素を見れば、ヒ素ヒ素だというヒ素の主張は正しい。

この細菌「GFAJ-1」株は、天然のヒ素を多く含む米カリフォルニア州の塩湖「モノ湖」の堆積物から見つかった。研究室で培養して調べたところ、リンの代わりにヒ素代謝に使い、増殖していた。リンは、炭素などほかの5元素とともに、生命体が核酸(DNAやリボ核酸)やたんぱく質などを作るのに必要な元素だ。ヒ素とリンは化学的な性質が似ている。

ヒ素とリンは元素記号表では縦列が同じでお隣同士。これをアルファベットに例えれば、(日本人的には)BとVの違いぐらい、VとWの違いと考えれば、どっちでもいいじゃん、ということになる。
言葉の意味はアルファベットの並びで決まるが、物質の作用関係も元素の並び、文脈で決まる。地球にしか住んだことがない人間は地球的文脈に慣れきっているので「ヒ素は猛毒」は普通に通用する。アルファベットの組み合わせで色々な意味ができるように元素記号の組み合わせで色々な生命ができてもおかしくないということ。
ニュースではリンの代用としてヒ素が使われたと思われるとのことだが、実はリンがヒ素の代用だったのかもしれない。もし、地球がヒ素の方がリンより入手し易い環境だったら、ヒ素が猛毒でない文脈で生物が発達していたかもしれない。
とすると、この研究成果の最初の応用は、映画産業あたりかもしれない。ヒ素を含んだDNAを持ったミュータントとかゾンビとかが今後流行るかもしれない。そうしたモンスターにリンを飲ませたら死んじゃったとか。
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