「海水」と「再臨界」の関係は言葉の問題

1号機の海水注入を55分間中断 再臨界恐れ首相指示(47NEWS)

地震翌朝に燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きたとみられる福島第1原発1号機で、政府が公表した3月12日の海水注入開始時刻の前に東京電力は注入を開始、政府の指示で55分間注入を停止していたことが20日、分かった。
海水注入の遅れで被害が拡大したとの批判があり、専門家は「海水注入を続けるべきだった」と指摘している。
政府の対策本部の資料では、海水注入の開始時刻は3月12日午後8時20分としていた。だが、東電が5月16日に公表した資料では、午後7時4分に海水注水を開始し、同25分に停止、午後8時20分に海水とホウ酸による注水開始、と記載されている。
政府筋によると、午後7時すぎの海水の注入は現場の判断のみで開始。原子力安全委員会への問い合わせで海水注入で再臨界が起こる恐れがあることが判明したとして、菅直人首相がいったん注水を止めさせたという。その後、問題ないことが分かり、ホウ酸を入れた上での注水が再開された。

これ、素直に読めば、東電は午後7時4分に海水注水を開始し、ホウ酸を混ぜるために同25分に停止、午後8時20分に海水とホウ酸による注水開始したということだろう。また肝心の菅首相の指示は「注水を止めさせたという」と伝聞情報だ。
一番のキーポイント、「海水注入で再臨界が起こる恐れ」だが、そんなこと元々有り得ないのだから、
班目委員長「私は言っていない」 再臨界の危険性発言(朝日)

班目春樹・原子力安全委員長は21日夜、朝日新聞の取材に対し、政府・東電統合対策室の会見について「再臨界の危険性があるなどと私は言っていない。侮辱と思っている」と反論した。
会見で配布された海水注入をめぐる事実関係の発表文には、「原子力安全委員長から、『再臨界の危険性がある』との意見が出された」などと記されていたが、班目委員長は「発表文は東電と官邸と保安院が作ったもの。原子力安全委員会として抗議する」と話した。

は本当だろう。多分、

「(真水がなくなった以上、海水を入れないと)再臨界の危険性がある」

と、

「(ホウ酸を入れないと)再臨界の危険性がある」

という二つの「危険性」が、どこかの時点で意味がグチャグチャになってしまい、トンデモな真逆に変換されたのではないか。確かに海水を入れないで空焚きを続ければ再臨界の可能性があると思うし、(ホウ酸を入れないと)再臨界の危険性があるのは論理的に正しいのだから。
元記事では、

菅直人首相がいったん注水を止めさせたという

と、「という」になっていて、はなはだ心もとないのが香ばしい。
最もあり得る可能性は、元記事自体が伝聞の伝聞のような話なので、記者自身が誤解して、あるいは半ば意図的に誤解して政局ネタにしたかったということだろう。そもそも朝日の記事でも、

会見で配布された海水注入をめぐる事実関係の発表文には、「原子力安全委員長から、『再臨界の危険性がある』との意見が出された」などと記されていた

とあり、なぜ再臨界の危険性があるのかは曖昧なままになっている。
単なる政局絡みのガセネタだろう。一方では海水注入すると廃炉が決定的になるので、「廃炉で迷っていたなどと批判されると困る」筋から意図的にリークされ、リークする側とリークされる側の利害が一致した可能性がある。実際、発表されたのは16日で記事になったのは20日。4日間で情報の「溶融・再臨界の危険性」も起こり得るのだ。
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