首相交代劇の真因は議員の出世競争

なぜ国会議員は選挙と首相を引きずり下ろすことだけにあれほど必死になれるのか。前者は当然、国会議員としての地位保全に関る重大事案だからだ。では後者はなぜなのか。現実に小泉政権以降、自民党政権民主党政権にかかわらず、1年おきに首相の首がすげかえられてきた。それは彼らが議員である前に政党党員だからだ。
政党を企業に置き換えれば分かりやすいかもしれない。当然政党員も党内の出世競争にさらされる。世襲議員など最初から有利な立場にある議員は若干余裕があっても、それ以外は必死だ。
党内出世競争に勝ち抜くためには、まず国会質問で目立たなければならない。目立つためには目立つ質問をしなければならない。大向こう受けする質問をしなければならない。間違っても、たとえ重要であっても世間が無関心な、あるいは馴染のない議題を質問する暇などない。
一番目立つ質問とは何か。あわよくば内閣を揺さぶり、あわよくば内閣総理大臣にダメージを与えそうな質問だ。これは戦国時代の武将と同じことだ。NHK大河ドラマなど時代劇を見れば、敵将の大将の首を取るのが最大の武勲だ。自分の質問をきっかけに総理退陣に追い込めれば、大功労者で出世の足掛かりを掴める。
元々そのような質問バイアスが働くから、国会質問の中心は必然的に「首相の首を取る」に収斂するようになる。小泉政権時代は例外という向きもあるかもしれないが、それは嘘だ。小泉純一郎が珍しく相手を返り討ちにする迫力があっただけの話だ。
菅直人はどうか。明日も総理大臣でい続ければ、一応、小泉以降では在任最長記録367日を達成するようだ。恐らく、今後も居座り続け、ひょっとすると衆議院議員任期切れまで続けるかもしれない。なぜなら辞める理由は今のところない。これは意外に強みだ。いくらペテンと呼ばれようが、さらに畳みかけて「一定のメドとは、衆議院議員の任期切れも、一定のメドなのかもしれない」と言ってもおかしいところは何もない。2年以内に、震災や福島第一原発は、恐らく一定のメドは立たないと言っても、ただちに間違いとは言えない状況だからだ。
いくら民主党の一部が造反の態度を続けても、所詮覚悟なき造反なのは今回の騒動で明らかになったので、退陣時期はいくらでも先延ばしできる一定のメドがたったのだ。いくら今後も国会質問で「辞めなさい」と言われても、底が割れているから、もう柳に風でOKということになるだろう。何よりも世論は彼らに付いてきておらず、出世競争がヒステリー化しても自民党の支持率は却って下がり、裏腹に菅内閣の支持率は微妙に上がりつつある。もう少し我慢できれば、本当に満期まで持つかもしれない。
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