「現実への逃避」というもう一つの現実逃避

小出裕章氏が反原発のヒーローとなったもう一つの理由by香山リカ

原発問題に過剰にのめり込んでいるのは一般社会に強い欺瞞を感じた人たち
しかしながら、自分がやりたくもないことを、社会をまるでわかっていないような頭の悪い人たちと一緒にやりたくない。劣等感と優越感がない交ぜになったような、一面では純粋な理想主義者たちなのです。
そんな彼らが原発問題にのめり込んでいます。そして、「神」として崇拝しているのが、いま反原発で最も注目されている小出裕章氏です。

何をもって「過剰にのめり込む」のかよくわからないけれど、のめりこんでいるのは、「反原発」だけでなく「反・反原発」にのめりこんでいる人々だっている。後者の人々だって「一般社会に強い欺瞞を感じた人たち」はたくさんいる。(例えば池田信夫氏とか)だから小出裕章氏は「神」などと思うのは思い込みだ。

彼らはいま、フィクションの世界ではなく現実の世界に起こった原発問題にこころを奪われています。とはいえ、彼らが行動するのはあくまでもネットの世界に限定されてしまいます。熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。むしろ現実世界とネット上の世界に大きな乖離が生じてしまっているように思えてならないのです。

ここらあたりからだんだん何を言いたいのかがわからなくなってくる。この前のコラムで震災ボランティアの祭りが終わったということで、「ボランティア=現実世界での行動」、「ネットは現実の行動でない」とでも言いたげだ。それに、

熱狂する彼らがネット上で喧々囂々の議論をしても、現実に起こっている原発問題は何も解決しません。

って何を根拠にしているのかさっぱりわからない。そもそも何をもって「原発問題の解決」なのか自体、誰もわからない状態だと思うのだけれど、この人はわかっているのだろうか。それこそ「思い込み」だろう。
一番笑えるのは、

ネット世界の象徴でもあるホリエモンも、現実に身体を拘束される刑務所行きという事態は避けられませんでした。時代が変わっても「ネットで服役」ということは起こり得ないのです。

ホリエモンがなぜネット世界の象徴なのかもよく分からないし、ホリエモンが収監されたのは香山さんの言う「現実との接点」の問題である。そもそも香山さんの「ネット」と「現実」の乖離って何なんだろう。ネットは現実の一部に決まっているだろう。ネットがなくたって人間の妄想は現実に影響を与える。妄想は現実でないが、妄想する人間は現実だ。同じようにネットで発言する人間は現実だ。もちろんネット≠妄想だけれど。
こういうネットと現実の素朴すぎる二分論って随分古臭いなあ、と思う。たぶん、20年くらい前にマスコミで流行った言説だろう。
そもそもバーチャルという意味ならイチロー選手だってバーチャルのヒーローだ。彼は「現実」でヒーローになったのではなく野球というゲームのバーチャル世界でヒーローになったのだ。ことほど作用に香山さんが思い込んでいるらしい「純粋な現実」など存在しない。現実自体が妄想や幻想で成り立っており、「ベタな現実」など、どんなに「現実」をほじくっても出てこないよ。

小出氏が世間の注目を浴びるようになったことで、奇しくもネットの社会に引きこもった人たちの存在を再発見することになりました。これらの人の力を、いまの社会はうまく活用できていない現実が浮き彫りになったのです。

まあ、このあたりは香山さん自身の思い込みだろうから、現実の小出氏とは何の関係もないことは断言できる。しかし、

ネットの社会に引きこもった人たち

というのも返す返すも古いなあ、と思う。香山さん自身が名状しがたい何かに引き篭もっている気がする。
「現実逃避」という言葉は通常「現実からの逃避」と解されるけれど、世の中には「現実への逃避」という意味で現実逃避している人々だっている。そういう人々に限って「現実を知れ」が口癖で、実は現実へ逃避しているという自覚がないものだ。それが一番居心地がいいだろうから。
おおむね精神分析医というのは「現実」をデフォルトにして人間を見る癖がついている。だから「現実過剰適応症」は「まとも」としてスルーされる。
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