新幹線事故で中国人の命の価値が上がる

215万円の賠償額提示 中国高速鉄道事故(日テレ)

39人が死亡した中国の高速鉄道の追突事故で、犠牲者の遺族に対し、政府が約215万円の賠償額を提示したことがわかった。
遺族たちは事故があった中国・温州市内のホテルで、鉄道省上海鉄道局の担当者と面会した。遺族によると、鉄道局側は、一人あたり17万2000元(約215万円)の賠償額を提示した。
中国国営・新華社は、福建省に住む遺族との間で50万元(約625万円)の賠償額で合意したと伝えているが、取材をした遺族たちは、そのような事実は知らないと反発している。

死亡事故の死者数という点なら、時々起きる炭鉱事故の方が多いだろう。しかし、今回は中国版新幹線の安全性管理の杜撰さよりも犠牲者の社会階層がこれまでの事故と違うということが意外に大きいと思う。
炭鉱労働者の犠牲者は社会の下層クラスの人々であったのに対し、今回の新幹線に乗って犠牲になった人々のほとんどはかなり懐に余裕のある中産階級、富裕層だろうということだ。
これらの人々は所得に比例して権利意識も高くなっており、社会的な発言権も高いと考えられ、もはや中国政府もこれまでの言論封殺、臭いものにはふた、だけでは対処できないと悟りつつあるのだろう。これまでも農薬まみれ食品など安全性を脅かす問題はあったが、高所得者は高くて安全な食品を買えばいいというだけで政府に文句まで言う必要はなかったのかもしれないが、新幹線となると話は変わる。高くても危険なのだから。
新幹線そのものは今後とも建設し続けられるだろう。一部に日本の新幹線に比べて建設ピッチが早すぎるという声もあるが、人口で約10倍、国土面積で16倍あるのだから相対的に考えれば必ずしも拙速とは思えない。なかったのは安全に対して発言力のある人々が少なかっただけだ。環境負荷の小さい高速鉄道は今後とも建設せざるを得ないだろう。
だが、こうした命の値段が上がった人々を乗せるとなると、必然、安全対策投資が大きくなり、今後の建設コストは上がるだろう。
これは新幹線に限らない。中国では27箇所で原発を建設中だそうだが、原発の安全性に関しても、徐々に先進国並みに安全性を求める人々の意識が高まり、今後は計画通りには行かなくなると思う。そうなると、今でさえ電力不足なのが、今後とも慢性化して、どうしても成長率はこれまでのように右肩上がりには行かず、徐々に安定成長に向かうはずだ。今回の事故はその大きなきっかけになるかもしれない。
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