円高とドル暴落の幻想

米国債格下げ 波乱要因へ懸念も(NHK)

今月4日のニューヨーク株式市場では、アメリカやヨーロッパをはじめとした世界的な景気減速への懸念が急速に強まってダウ平均株価は500ドル以上急落しました。これを受けて東京市場などアジアの株式市場にも株安が連鎖し、世界同時株安の様相を呈していました。こうしたなかで、これまで最も安全な投資先の一つとされ、各国の投資家が大量に保有するアメリカ国債が格下げされたことで、金融市場の動揺が広がるおそれもあります。ただ、ほかの大手格付け会社アメリカ国債の格付けを引き下げていないことに加えて、アメリカ国債に代わる投資先を見つけるのは難しいという投資家も多く、格下げの影響は限定的だという見方も出ています。一方、今回の格下げで基軸通貨、ドルの信認が低下し、一段と円高が進むことが懸念されます。政府・日銀は急激な円高に歯止めをかけるため今月4日に市場介入に踏み切り、円相場を円安方向に押し下げました。しかし、その後、アメリカ経済の減速懸念を背景に再び円高ドル安が進んでいただけに、アメリカ国債の格下げをきっかけに、ドルを売って円を買う動きが加速するのではないかという見方が出ています。

榊原英資氏は今朝のテレビ番組で米国債の格下げはアメリカ衰退の始まりと言っていたが、そんなことは半世紀前から言われてきた。1957年のスプートニク・ショック、ソ連の大陸間弾道弾開発によるミサイル外交、ガガーリン・ショックと立て続けにソ連にしてやられ、アメリカは衰退し、ソ連が世界の覇権を握り、世界全体は共産化されるだろうと言われていた。
しかし、現実は真逆で、滅んだのはソ連だった。いかに時事問題の考察があてにならないかが分かる。
そもそも格付会社など、実質的に相場操縦会社であることは、リーマン・ショックで露に示されたばかり。そんな会社が米国債を格下げするのは相場に大掛かりなイベントを仕掛けるためのもので、そのカードを切ったということはむしろ、とりあえずドル安に歯止めをかけるサインとも読める。つい先月まで米経済の指標は結構良い数字が出ていてニューヨーク・ダウも異常に上がっていた。利食いを仕掛けるにはもってこいのタイミングだった。
翻って、日本の円高の報道ぶりは十年一日の如しで変わり映えしないのだけれど、およそ自国通貨が評価されているのにあたかも国難のように語られるのは新興国を除けば日本くらいのものだろう。
けれど、日本国内の発言力の力関係を考えれば、これは空気によって作られたとしか思えない。歴代財界総理、経団連会長は大体、輸出主導産業から輩出しているので「円高=悪」という伝統的思考形式が定着している。十八番の円高悪玉論で用いられるのはこれまた十年一日の如き「中小企業が大変だ」でテレビは儀式のように東京都大田区あたりの町工場を取材する。そんなに大変なのなら、もうとっくに日本から町工場が消滅しているだろう。
現実には円高米国債格下げもマネーゲームの1イベントで、祭りは大騒ぎすればするほど効果が大きくなるということだろう。
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