偽装クリーン電力の可能性はないのか

太陽光や風力を最大限伸ばし新産業に(日経)

原子力発電所の新設が難しくなるなか、長い目でみて電力をどう安定確保するか。天然ガスや石油など化石燃料の輸入を増やせば国富が流出し、温暖化ガスの削減にも逆らう。 太陽光や風力など再生可能エネルギーを増やすのは当然の選択だ。
一方で、太陽光や風力は天候に左右されて不安定で、今は発電コストが高い。こうした現実を踏まえ、電気料金の上昇を抑えつつ再生エネルギーを普及させる知恵が要る。規制 緩和や電力市場の改革など目いっぱいの努力をし、新産業に育てたい。

全量買い取り制度の導入で10、20年後に再生エネルギーをどの程度まで普及できるのか。また、規制緩和や電力市場の改革など追加的な手を打つことで、目標をどれだけ上積みできるのか。

ところで、電力自由化が本格化し、自然エネルギーで発電する電力会社が増えて、「クリーンエネルギーだから多少高くても買いたい」とエコな個人ばかりか企業イメージを高めるために企業も買いたいということで需要が増えたらどうなるのだろうか。自然エネルギー、特にメガソーラーパネル風力発電だと電力が不安定なうえ、発電量が限られる。そこに需要が殺到すれば、たちまち売り切れになるかもしれない。
実際、今でも東京都内で開かれたあるクリーン電力促進のための講演会を聞きに行ったら司会者は「この講演会のために使われる電力は青森のクリーンエネルギーの会社から買い取っています」と説明していた。宅配便じゃあるまいし、わざわざ青森から東京まで電力を取り寄せるなんてこと自体ナンセンスだなあ、とは思ったのだけれど。
そこで、クリーンなイメージが定着して一種のブランド化したA社はダミーの子会社A'社を設立し、A'社は既成の大手電力会社から大量の電力を通常の電力料金で買い取り、A社に転売する。A社は転売された電力を高値でエコな消費者に売り付けて利ざやを稼ぐ。そもそも本体のA社だって自社事業用の電力は大手電力会社から買い取るだろうから水増しなど抜け道はいくらでも考えられるだろう。
大手電力会社にもリベートが入る上に、「着々と電力のクリーン化が進んでいるという印象を与えられ、電力業界全体のイメージがよくなる」というメリットもあるので知っていても知らんぷりを決め込む。
その結果、発電量の統計ではあり得ないくらいの何倍ものブランド自然エネルギーが売れてしまうことにならないか。言ってみれば、国産偽装ウナギのために実際の国産ウナギの生産量以上の“国産ウナギ”が市場で流通しているとか、とか偽装コシヒカリ米で実際の魚沼産コシヒカリの生産以上に市場で流通しているのと同じことが起こらないかという問題。
もし、これがまかり通れば、皮肉にも菅首相が掲げた2020年までに再生可能エネルギーによる発電量20%の目標は電力消費統計レベルでは意外と簡単に達成されるかもしれない。
そもそも、ウナギやコメと違って電力には原発であろうが火力発電であろうが自然エネルギー発電であろうが、味や品質に違いが出るわけではない。自然エネルギー電力が不安定と言っても、常に他の電力が不安定分を補充するのだから一物一価の法則が働くはずなのだけれど、人間には経済学で推し量れない思惑や感情が電力にも働くだろうから一筋縄ではいかないだろう。
もしそうなれば確実に言えることは必ず皺寄せされて通常電力料金が不当に上がることだろう。孫正義氏は200円程度、コーヒー一杯分と言っているが、これはチェーン・コーヒー店の最低値段で、高級ホテルのロビーのようなところだと同じコーヒー一杯でも700円とか1000円とかする場合もある。
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