製造業を焼き畑農業化するグローバリズム

内田樹の研究室:さよならアメリカ、さよなら中国

未熟で斉一的な消費行動の結果、さまざまな産業分野、さまざまな市場が「焼き畑」的に消滅している。
資本主義は「単一の商品にすべての消費者が群がる」ことを理想とする。
そのときコストは最小になり、利益は最大になるからである。

TPPの問題は「国民経済」という概念をめぐる本質的な問題である。
そのことを乾杯のあとのシャンペンを飲みながら改めて感じた。
もう一つ「中国での工業製品生産はもう終わりだ。これからの生産拠点はインドネシアだ」「これから『川上』の経済活動を牽引するのは中国ではない、インドだ」というのも、両方のエグゼクティヴの共通見解だった。
中国の没落は私たちの予想よりもずいぶん早い可能性がある。
というわけで、アメリカと中国は「もうそろそろ終わり」という話を結婚式のテーブルでうかがって、耳学問をしたウチダでした。

まあ、このこと自体、目新しい知見ではないのだけれど、収益の高い場所に工場を移転し、そこが賃金が高くなり、資産家価格が高くなって収益が逓減してしまうと別の収益の高い場所に移動する。
冷静に考えれば、これは一番粗放的農業である焼き畑農業に一番似通っていることに気付く。それは単に消費行動の一極集中的バブル消費だけではない。
現実には本物の焼き畑農業ほど単純ではないのだろうけれど、工場のスクラップ&ビルドが常態化して、折角設備投資しても利益を享受できるのは期待ほど長くないという気がする。とすると、長期的に考えれば投資効率は存外低いと思われること。
しかも、製造業版焼き畑農業はやがて行き着くところまで行くと飽和化する。つまり、もう移動する地域・国家がなくなるだろうということ。じゃあ、その後どうするのだが、めぐりめぐってやっぱり日本国内に戻りましょう、という日が意外と早く来そうだ。
中国などでは工場を立地するために農地がどんどん工場用地に転換されているらしく、今後豊かになった沿岸部から内奥部へ移動するのだろうが、気が付いたら膨大な工場跡地が残り、農地は減っていて食料不足になってましたということが近い将来起こりかねない。
現在進行中のタイの洪水も森林を伐採し、工業団地をどんすか作った結果があのザマだ。同じような惨禍が色々なバージョンで世界中に起こりそうな気配だ。インドだってマレーシアだってベトナムだってインドネシアだってどんどん森林が伐採されて工場が今後も建てられるだろうから。そうなると文字通り焼き畑工場だ。
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