「実効支配」は和製外交用語?

竹島尖閣諸島問題で「実効支配」という言葉がメディアで頻用されているので、そもそも論で基本概念を調べようとしたら、困ったことに直面した。まずそれに相当する適当な用語が英語では見つからない。
困った時のWikipedia頼みで調べたら、実効支配

一般に「実効」支配という言葉が用いられる事例は、外国政府による領有または政権そのものの国家の承認が伴っていないケースである。承認がなされない理由は、当該地域に関する他国との領有権問題や政権の正統性に対する懐疑などである。

他言語版でリンクされているのは何と韓国語と中国語(中文)のみ(笑)。これじゃまるで竹島尖閣諸島問題のためだけの用語と錯覚してしまいそうだ。ロシア語版があったら完璧なのだが。
ひょっとすると、韓国語と中国語は日本に対抗上、作成されたのかもしれない。
日本語版には、

この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2012年4月)

と注意書きされているが、これと歩調を合わせたかのように、
中国語版=實際統治を読むと、

本条目需要补充更多来源。(2012年8月26日)
(当条目はもっと多い出所を補充しなければなりません。(2012年8月26日)

となぜか微妙な注意書きが昨日付けで出されている。
韓国語版=실효 지배(実効支配)にも、

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と書かれている。
日本語版では、一応英語の訳としてeffective controlとなっているのだけれど、検索しても出て来るのは株式シェア比率による会社の支配権に関するもので、日本語の「実効支配」という意味で使われているのは日本の新聞社系の英字新聞を除いては見つけられなかった。
ちなみに普通に領土と言えばterritoryだし、領土主権と言えばterritorial Sovereigntyだろう。
ところで、よく「尖閣は日本が実効支配しているので有利」などと言われる一方、「尖閣に領有権の問題は存在しない立場」ともよく言われている。この使い方本当にいいのだろうか。もし「領有権の問題は存在しない立場」なら、「実効支配」という言葉を使うことと齟齬を来すことにならないか。日本側が「竹島(または北方領土)の領有権は日本が保持しているが、韓国(ロシア)が実効支配している」とか、中国側が「我が国の固有の領土なのに日本が実効支配している」と不法占拠されていると主張する側が言うのなら、「あちらは領有権を主張しているがこちらは認めない立場」という意味で整合性が合うが、日本側が「尖閣の領有権の問題は存在せず日本が実効支配している」というのは矛盾するように思える。単に「日本は尖閣を領有している」でピリオドの筈だ。領有している側が「実効支配」と言うこと自体及び腰の現れだろう。
いずれにせよ「実効支配」という用語自体が、戦後、外務官僚によって作られた造語、言ってみれば霞が関文学の一派生系ぽい。単に「領有」と書いた方がよっぽどすっきりする。
しかし、
尖閣上陸認めず=都、洋上調査へ―政府(WSJ)

政府は27日、沖縄県尖閣諸島購入に向け上陸申請を提出していた東京都に対し、上陸は認めないと文書で伝えた。都はこれを受け、洋上から同諸島の現地調査を近く行う方針だ。
藤村修官房長官は同日午後の記者会見で、申請を却下した理由について、「政府は原則として、政府関係者を除き、何びとも上陸を認めないとの方針を取っている」と説明。さらに「都による取得の見通しが必ずしも立っているとは認識していない。上陸の必要性を判断する状況にない」と述べた。
これに対し、都幹部は取材に対し「申請が認められず残念だ」と語った。尖閣購入を目指す都は早ければ31日にも洋上調査を行う。当初、29日の上陸を予定していたが、台風の影響で延期した。[時事通信社

となれば、及び腰の「実効支配」すら危うくなりかねない。
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