変電所に蓄電池なんて日本に必要ない

昨晩の「NHKスペシャル」でエネルギー政策の討論番組。茂木敏充経済産業相も出演していたのだけれど、「再生可能エネルギーに全力に取り組む」と言った割に全然具体案は出て来ない。ひとつだけ、再エネの不安定な電力供給を安定化するのために変電所に蓄電池を設置するとか言っていた。
けれど、再生可能エネルギーのシェアわずか0.6%の日本になぜそんな無駄な投資をする必要があるのか。そんなことは経済産業省のレポートでも否定的に語られている。
再生可能エネルギーの導入拡大に伴う追加的コスト(経済産業省・資源エネルギー庁)

2.バックアップ電源又は蓄電池の整備(2)
再生可能エネルギーの導入が進んでいるドイツ・スペイン両国では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ガスコンバインドサイクル発電や揚水発電等のバックアップ電源を整備。
両国とも、特にガスコンバインドサイクル発電の重要性が強調されていたが、再生可能エネルギーの優先的利用により稼働率が低下し、収益性が悪化。新設が困難との問題点も指摘された。スペインではこれに加えて、揚水発電も活用。
技術力、コストの問題があり、蓄電技術はそれほど使われていない。

セバスティアン工業観光商務大臣(スペイン)

バックアップ電源(天然ガス火力発電、揚水発電)がしっかりしていないといけない。将来的には蓄電技術も重要になる。

スペインは現在でも供給電力の3分の1が再生可能エネルギー。その国の「将来的」ということは再エネのシェアが50%を超えた時点でのお話だろう。それまでは火力発電所による調整で十分なのだ。ましてや再エネ率0.6%の日本で蓄電池導入なんぞ無駄な投資以外の何物でもない。できるだけコストがかかることを強調して「できない理由」にしたいらし。こう言うのは霞が関が対応マニュアルしっかり作っているのだろう。霞が関は政策のシンクタンクではなく、印象操作、世論操作のシンクタンクなのだから。
このレポートでは、ドイツ、スペインの幹部に火力発電の収益率が課題などともっともらしく語らせられているが、そもそも再エネを導入するのは火力発電の稼働率をできるだけ減らして化石燃料の消費を抑制するためのもので、火力発電の“収益性”を良くするのが目的ではない。個々の火力発電の収益性よりも二酸化炭素排出抑制と燃料代の抑制である。
番組では例の「自然エネルギーを増やさせない元経産省官僚」こと澤昭裕氏も出ていたのだが、彼が以前やはりNHKの番組で言っていた「スペインは電力が余れば外国に輸出して調整できる」と言っていたのを覚えているが、このことも、当のスペインによって否定されている。自分の省の書いたレポートぐらい読んで勉強してほしいものだ。

ボガス エンデサ社スペイン・ポルトガルGM
スペインは他国との電力融通にほとんど期待できない。このため、電力供給の3分の1を占める再生可能エネルギーの変動に対応したバックアップ電源が欠かせない。揚水発電天然ガス火力発電が重要。

澤昭裕氏のような不勉強な素人はともかく、茂木経産相までも今更「再生可能エネルギーに全力を尽くす」というのをここに来てまだ性懲りもなく言っているということは彼も過去の経緯を全然知らないらしい。そんなこと20年前から言われてきていたのだから。今後10年以内に見通しを示すって、これまで20年間何もやってませんでしたということだから、恐らく10年後も「全力を尽くす」と10年後の経産相はまた同じことを言い続けるのだろう。
ところで、この蓄電池設置促進、何も経済産業省だけじゃないようだ。
平成24年度再生可能エネルギー導入のための蓄電池制御等実証モデル事業の公募について(環境省)

本事業は、大規模再生可能エネルギー発電施設に大型蓄電池を設置し、蓄電池容量を含めた効果的な設置方法及び制御手法等を確立するとともに、これによる出力安定化及び変動緩和効果等の検証を行う事業に要する経費の一部を補助(補助率:定額)することにより、電力供給の安定化を通じた再生可能エネルギーの導入促進及び温室効果ガス排出削減を図ることを目的としています。

なぜこうも経産省環境省が連携して蓄電池事業を勧めるのか。どうも、電気自動車が期待以上に普及が進んでいないことと関連しているようだ。本来、蓄電池が必要な電気自動車という本命が不振なら他の事業に振り分けるしかない。おまけにボーイング787リチウムイオン電池にケチがついた。もはや蓄電池事業は国策として何が何でも需要を捏造しなければならないという台所事情があるのだろう。
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