太陽光出力制御360時間は実質毎日制御ルール?

再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について 平成26年12月18日 資源エネルギー庁

(2)「30日ルール」の時間制への移行【省令改正事項。1月中旬の公布日から施行予定】
現在、1日単位での制御を前提として、年間30日まで行える無補償の出力制御について、時間単位での制御を前提として、太陽光発電については年間360時間まで、風力発電については年間720時間まで行えるよう制度を見直す。時間単位できめ細かく出力制御を行うことにより、接続可能量が拡大する。

まず太陽光発電の360時間ルールへの移行は公布日以降の新規契約分。しかも現在受付を保留している電力会社管内。保留していない電力会社管内は「受け入れ可能電力を超えない限り」従来通り30日ルールを継続するそうだ。不思議な話だ。

時間単位できめ細かく出力制御を行うことにより、接続可能量が拡大する

のだから事業者にとってもメリットになる筈。しかし、既に契約済ませているから変更できないのだそうな。そんなこと、事業者に聞いて「どっちがいいですか。契約変更に応じてもらえますか」と聞けば済む話。
けれど、新しい360時間ルールが必ずしも事業者にとってメリットにならない可能性大だ。
360時間というのは単純に日に換算すれば15日になる。しかし、こんな換算ナンセンス。日照時間1日24時間じゃないのだから。仮に1年の1日平均日照時間12時間とすると、360時間を日に換算すれば30日になる。何のことはない同じ。
しかも、同じ360時間でも、

無補償の出力制御

の“質”が変わって来る。従来の30日ルールなら日の出から日の入りまで12時間出力制御されるワケだから太陽光の出力がしょぼい時もすべて適用されてきた。これを「改善」して

時間単位できめ細かく出力制御を行うことにより、接続可能量が拡大する。

ということらしい。
しかし、360時間ルールになると、仮に1日に占める「無補償の出力制御」が3時間とすると、日に換算すると120日も出力抑制できることになる。2時間だと1年の半分、180日出力抑制が可能となる。1時間だと何と1年365日、事実上、「無補償の出力制御」が可能になってしまう。またその方が買い取る電力会社には絶対に有利。発電事業者にとっては一番美味しい「書き入れ時」の時間帯をごっそり奪われかねないのだから、むしろ実質的には「時間単位できめ細かく出力制御を行うことにより、接続拒否量が拡大する。」ということになりかねない。
そもそも「九電の再エネ供給超過は“仮想現実”」のように一番困っている九州電力ですら春と秋の数日間、しかもその数日間の1日の数時間程度が“過剰電力懸念時間”だ。精々1年間では50時間までぐらいだろう。それがなぜか「360時間」なのだ。
全国的に“過剰電力懸念時間”の必須条件となる快晴日だが、年間快晴日数ランキングによると、埼玉県の56日が1位、最下位が山形県の4日で凄くばらつきがある。九州電力管内だと宮崎県が47日、佐賀県29日、長崎県25日、熊本・鹿児島県20日、福岡県19日、大分県16日だ。ましてや九州全体で快晴というのは最大限見積もっても16日前後ということになる。もちろん快晴日=“過剰電力懸念時間”ではなく、春秋のごく限られた日の快晴日なので結局、九電管内でも「数日数時間」が“過剰電力懸念時間”であることには変わらない。多めに見ても「50時間ルール」で十分なのだ。
これを「360時間ルール」にすると、むしろ別の「懸念」が出て来る。買い取りする電力会社による“裁量による過剰電力懸念”だ。もし裁量的に接続拒否を年中できるようになれば買い取り電力量を大幅に削減できることになる。そもそも電力会社は365日のそれぞれの1日の時間帯別電力需要を公表していないからその裁量が適切かどうかは電力会社しか分からない。
FITによる名目固定価格はこれからも下げられるだろうが、さらに裁量拒否で実質ベースの固定価格はさらに下押しされることになる。そうなると、発電事業者には裁量拒否懸念から採算の目途が立てにくくなり、参入業者は減ることになるだろう。日本の太陽光発電が占める供給電力費はまだ数パーセントなのに、これでは半永久的に太陽光発電は数%程度のシェアで封じ込められることになりかねない。(参考)
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