ガラパゴス化しかねない日本の再エネ電力

報道ステーションが伝えない再エネの不都合な真実 政策破綻のスペインから学ぶことは何か 山本隆三常葉大学経営学部教授

スペインの国土の形状は円に近い。送電線網も当然円状になっており、日本列島の送電網とは異なり不安定な再エネの電源を吸収しやすい形だ。

何が凄いと言っても、これは傑作だ。よくこんなこと考えたものだと感心する。円状でない国は再エネには不向きだそうだ。ましてや日本列島のように南北に細長い国は不向きも不向きみたいだ。
一昔前、牛肉自由化交渉で「日本人の腸は長いので肉食に不向き」とか、日米自動車摩擦で「アメリカのメーカーは現地対応を怠って右ハンドル車を作る努力もしていない」とかの珍論があった。車の場合、日本と同じ左側通行のニュージーランドでは米国製フォードの右ハンドル車ばかりだったのだが。
一頃、ヨーロッパは偏西風が吹いているから風力発電に向いている、日本は不向きというのがあったが、偏西風って西ヨーロッパに偏って吹いている風なんけ、と思ったものだ。もちろん、日本にも偏西風は吹いている。
この円状理論も、その類らしい。いや待てよ、こんな円状にまとまっていたら、全国が同じ気象条件になり易い。そうすると、風向や天気がいい場合、全国一律に再エネが大きくなって過剰電流起きないのか。そういう場合は輸出して「捨てる」のか。その逆も真で、気象条件が悪い場合、全国一律で悪いから再エネはゼロになりかねず、調整電源がしんどそう。
それに比べて日本列島は南北に長く、太平洋側と日本海側にも分かれていて全国一律同じ天気になる確率は限りなくゼロ。(電力会社同士が連携さえすれば)分散した再エネ電源が均される。そうすると、一定部分はベースロード的役割を担い本物のベースロード電源そんなに要らなくなる。
とどめはこれ↓。
「一国再エネ主義」は不可能だ 経団連21世紀政策研究所 研究主幹 澤昭裕

ドイツでは、自国内の送電線建設計画が住民の反対などで進捗していないため、北欧や東欧各国に余剰電力を「捨てて」いる。

そもそもドイツの風力発電、多いと言っても現段階で全体の9%。ちなみにドイツの再エネは水力、風力、太陽光、バイオと結構バランス取れている。風力が北部に集中しているからと言って、南部に直行する送電線がなければどうにもならないという話であるワケない。大体、住民の反対って、送電線建設なんて戦前からあったのに今更住民の反対で進捗しないって一体何なんだろう。そんなものがネックになるワケない。原発建設反対なら分かるけれど。

欧州の一国は日本で言えば「県」であり、それを国全体のモデルとするのは非合理的だ。
欧州全体を日本のモデルとすればよい。その意味では再エネ導入をドイツやスペインを例に考えるべきではない。

別にドイツやスペインだけでない。イタリアも2020年段階の再エネ比率目標は39%だ。
「欧州」=EUとすれば、EUの人口は5億人、これだけでモデルにするには無理ぽいのだけれど、再エネ比率は2012年で23.5%、2020年には35%になる見込み。2030年には大胆にも45%。(参照)まあ、大胆過ぎるという向きもあるが、EU温室効果ガス40%削減を掲げたからには電力でこれくらい再エネ化しないと、無理だろう。
で、「欧州を目標とすべき」日本はどうかと言えば、電力に限れば、30年電源構成:再生エネ比率20%台半ばへ 原発上回るということで、EUの目標の約半分。全然手本にしていない。大体、百歩譲って、「欧州全体=日本」なら、日本だけで全て賄えるワケで隣国との輸出入で調整する必要がないので論理破綻も甚だしい。
ちなみに原発比率と再エネ比率は無関係。また電気代も日本が再エネ30%になってもせいぜい3割ほど高くなるだけ。電力会社に有利な回避可能費用の計算方法(なぜか年金のマクロ経済スライドを彷彿する)を化石燃料削減分に見直せばもっと安くなる。
そもそも「風力や太陽光は不安定」がデフォルトみたいに言われているが、別にこんな不安定電源なくても、電力需要は元々不安定。天気で電力需要も変わる。今の異常気象のように、ゲリラ豪雨や前線の通過で気温が一気に5℃以上変化すると電力需要も大変化する。そのために調整電源は以前から行っていた。ところが、あたかも再エネが増えたら電力が不安定になるかのような半分デマのような風説の流布が流されている。
こうも屁理屈の屁のようなネガキャン、印象操作を最大限かましてまで再エネ抑制に励めば日本の再エネが限りなくガラパゴス化する。ガラケーでやったことをなぜ今度は再エネにするのか。
最大の問題はシェアの問題。ケータイ製造メーカーも国内的なシェア争いで無駄な競争に現を抜かして気がつけばガラパゴス化する。大手電力会社も一番重要なテーゼはシェアの確保による影響力の保持だ。その意味で再エネはお邪魔虫以外の何物でもない。彼らにとって、地球温暖化対策も国際問題として無視できない単なる妥協せざるを得ない厄介者でしかない。よって「原発はできるだけ多く、再エネはできるだけ少なく」が隠れた至上命題なのだ。
原発は再稼働できる分、再稼働すべきなのだが、「安定」、「ベースロード」というのはいかにも時代遅れ。その気になれば原発15%、再エネ35%のトータルで50%以上行けるのにもったいないというか、辛気臭い話だ。いまだに右顧左眄してああでもない、こうでもないと言っているうちに100年後には人類生存の危機が訪れるかもしれないのに。EUはそれを見越して2050年までには温室効果ガス60%削減を掲げ、今回の30年目標はその一里塚に過ぎない。伊達や酔狂だけでこんなこと始められるワケない。
だが、日本ときたらいまだ呑気な話に終始している。思考がガラパゴス化しているのだ。
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