硫黄島からの手紙

摺鉢山グンバイヒルガオ硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督)を遅まきながら観る。20年ほど前に実際に訪れた島だ。懐かしさが先に立つ。
副題がRed Sun, Black Sandの通り、硫黄島の海岸は黒砂だ。溶岩が砕けた砂浜だ。ちょうど3月でグンバイヒルガオの花が咲いていて、黒砂とのコントラストが美しい。硫黄島の戦いも2月から3月だったので、その時も咲いていたに違いない。傍に放置されていた戦闘機の残骸もそのまま映画に映されていた。
島全体が火山みたいなもので、飛行場の地面の割れ目から蒸気が出ていた。だから地下壕に入ると地熱で暑い。蒸し風呂に入ったような気分になったことを覚えている。この映画でちょっと残念だったことは地下壕の暑さが映像から伝わって来なかったことか。恐らく兵士達はうだる暑さの中で掘ったのだろうが。
それ以外の映像もわざとセピア調にしているためもあってか、「暑さ」が伝わって来ない。本当の硫黄島はもっと明るく暑く、海も、空に浮かぶ雲も、映像よりはるかに明るい。
緑も豊かだ。現在の、島を覆うギンネムは米軍が戦闘で荒廃した島の植生を回復するために航空機から種子を撒いたものだ。そのためか、映画では現在のギンネムの緑は消されているようだ。
ばかりか生き生きした自然が映画では故意に消されているように見えた。人間の累々たる死がそれを圧倒したのか。
摺鉢山の頂上に立つと絶景だ。文字通り島全体を見渡せる。黒砂の浜に打つ白波、飛行場。ツアーでもっと多くの人が訪れるべき場所だろう。露天風呂だって簡単に作れそうだし。防衛省はもっとこの島を開放すべきだろう。
しかし、こんなに慎ましく美しい島は、本来なら世界的に知られるべきではなく、ひっそりと太平洋に浮かんでいるべきだった。
映画そのものはまことに素晴らしい。俳優では二宮和也が特に良かった。監督が良さを引き出したのかもしれない。
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