グローバリズムは最も非効率な経済システムになる

ラニー・アームストロング監督のイギリスのディストピアSF仕立ての地球温暖化防止ドキュメンタリー映画age_of_stupidTHE AGE OF STUPID」を観た。ポスター(←)のようなシーンはないが、人間の脳味噌が制御不能になって無際限に温暖化してしまったという絵柄だ。「不都合な真実」がアル・ゴアの講演をベースにしているのに対し、こちらはタイトル通り「不都合」から「愚者」へとより攻撃的になっている。
2055年、ノルウェー北方の海氷がなくなった北極海に築かれた人類や生物のデータベースを収めたアーカイブタワー。そこで人類最後の生き残りピート・ポスルスウェイトが様々な映像アーカイブを取り出してなぜ間に合う間に手を打たなかったのかえお振り返る。
登場するのはインドの格安航空GoAirを立ち上げたベンチャー起業家Jehangir Wadia、イラクの子供たち、イギリスで風力発電設置に取り組む人、ナイジェリアで医師を目指す女性、アルプス・シャモニーの80歳を過ぎた山岳ガイド、元石油会社社員、ハリケーンカトリーナの被害を受けたニューオーリンズ住民。「不都合な真実」のようにグラフを示すわけでもなく、ただ今現在を描写する。
格安航空事業家は「貧乏人にも飛行機に乗れるようにしたい」と善意から立ち上げたのだが、同時にその善意は化石燃料の無制限の消費というパラドックスを暗示する。風力発電はいざ設置するとなると口では地球温暖化防止を言っている住民たちは景観が損なわれるなどの理由で1対10で否決する。山岳ガイドは若い時に比べて氷河に降りるまで長い長い階段を下りなければならなくなり、その階段は毎年長くなっていると言う。氷河が年々浅くなっているのだ。ナイジェリアの女性はシェルが石油掘削で莫大な利益をあげているのに地元に還元しないため、ろくな医療施設もないと訴える。
イラクの子供たち編絡みでは「イラク戦争が主に石油に関するものである」というアラン・グリーンスパンFRB議長の不都合な真実の証言も引用されている。
コアな主張は、目の前の危険には人間はすぐに対処できるが、今現在の温暖化の効果が本当に効いてくるのは30年後のことなので、人間の脳は、そんな先のことまで考慮してうまく適応できないという。
映画のイントロは実は130億年前の地球誕生前の太陽系から始まり、石油や石炭も地球が膨大な時間を費やして地中に貯め込んだ太陽エネルギーなのだと開設する。そんな莫大な地質学的スケールの時間を使って蓄えられたエネルギーをわずか数100年で一気に放出すればどうなるのかということを訴える。つまり地球始まって以来の大事件を人類が行っているのに、人類はその自覚を持てないまま事実上自殺したのだということで締めくくる。
Archive最後にアーカイブの管理人こう言う。「このアーカイブは誰のため? 誰かが気付いてくれればと思って」。そして、アーカイブは光の形に信号化されて宇宙に放たれる。地球の周りには無数の衛星のゴミが空しく地球を周回している。
本来は昨年末のコペンハーゲンCOP15を前に科学的知見に基づいた合意がなされるように作られた映画だが、「不都合な真実」のような人気は得られず、むしろクライメートゲートという同じイギリス発の反温暖化キャンペーンのスキャンダルにかき消された格好だ。
しかし、人間の心理にまで食い込んだこの映画は「不都合な真実」よりもはるかに挑発的で切迫感を訴えている。また、嘆きだけでなく、“global cap”という全世界ベースの二酸化炭素排出削減策を提示し、公平な排出削減を模索している。ただ、そのベースになっている配給制というのは効率性の面から疑問だ。
現在の排出削減目標の国別コンテストではどうにもならず、化石燃料の生産削減や炭素本位制を世界ベースで行わない限り、現実はこの映画の通りになる可能性は高いだろう。
現実に立ち戻ると、菅直人財務相は、

デフレ脱却のために金融の役割が大きいとしながらも、一方で「お金の循環が悪い。物を買ったり投資をするよりもお金をもっていたいという状況。成長分野にお金をどんどん投じていくことも考えて行きたい」とし、「今日そういう議論するかはわからない。狙いを決めての会議ではないので、意見交換はしっかりしたい」と述べた。
 補正予算の議論について菅財務相は、亀井静香国民新党代表からの要請を踏まえて「議論としては国民新党からいただいているので、何らかの形でしなければならないと思うが、現時点では1兆円の経済活性化の予備費を活用することをまずは具体化させていきたいと思う」と述べた。

と相変わらずの成長戦略で増税しても成長分野に投資したいなどと言及している。この人の脳味噌も制御不能に陥っているようだ。
実は今の成長戦略など中長期で見れば、最も非効率な投資戦略で、グローバル経済というのはエネルギー効率から見れば最も効率が悪いので早晩劇的に崩壊するだろう。今の成長戦略は相場で言う“高値掴み”になるだろう。政界で孤立した格好の鳩山邦夫氏だけがマイナス成長を唱えている。要は鳩山邦夫氏は政界では頭が良過ぎて浮いてしまっているのだ。
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