CO2減らしてもCO2増え続けるメカニズム
微小な海洋性植物の植物プランクトンは、大気中の酸素の約3分の2を生成している。
研究チームは、地球平均気温の上昇幅6度がしきい値になるとしながら、「水中と大気中で酸素欠乏が起こると思われる」と指摘。「万一そうなれば、地球上の生命の大半が死滅するのは明白だろう」と続けた。植物プランクトンの重要な酸素生成能力は水温に左右されるため、気温上昇が6度を超えると、この能力が損なわれるというのだ。
こういう話はそれほど唐突な話ではない。仮にそうなっても、3分の1は陸上植物で生産し続けるだろうから、大気中の21%を占める酸素がいきなりなくなるわけでもなさそうだ。海洋の生物が酸欠で死亡すれば、遺体が海底に沈み、(酸欠なので)そもそも分解が進まず、有機物が堆積し、炭素の貯留が進み、結果、大気中の二酸化炭素そんなに増えないかもしれない。
そもそもこの論文の不確かさは平均気温が6℃上がった場合に海洋の植物性プランクトンが死滅するという何かチグハグな仮説だ。大体、COP21直前に公表するというのも何だかアレだ。
その際、肝心の海水温はどれぐらい上がるのよ? この120年間で世界の平均海面水温は0.6℃くらい上昇しているが、気温はそれよりやや高い。ま、海面水温は5℃くらい上昇なのだろうか。
まだまだ遠い温度だが、今年のようなモンスター・エルニーニョだと、一部海域でもう既に起きているかもしれない。
仮に植物性プランクトンの酸素生産能力が5%低下すれば、どうなるのか。まあ、実際、今現在、それぐらい起きている可能性がある。
光合成は、
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
なので、酸素生産能力が5%減れば、二酸化炭素の固定能力も5%減る。海洋の大気中からの二酸化炭素吸収量は炭素ベースで年間2Gt。これは植物性プランクトンの労働だけでなく、二酸化炭素分圧も絡んでくるので、植物性プランクトンの炭素吸収能力は酸素生産量3分の2とすると、陸上の植物の炭素吸収能力は3分の1ということになる。で、陸上全体の純一次生産力は炭素ベースで年間564億トン(参照)になるので、海洋の植物性プランクトンは大雑把に炭素換算すれば年間1000億tくらいか。その5%は50億トン。
だが5%減っても、そのまんま5%減るとは考えにくい。炭素を固定すれば、それは動物性プランクトン、さらに大型の動物に捕食され、動物は折角固定した炭素を酸化して再びCO2を産出する。
で、結局海洋の年間二酸化炭素吸収量は17億トンくらい(参照)。今は20億トンくらいか。
めぐりめぐって、その5%が比例して吸収量低下に結びつくとなると、1億トンの低下か。1億トンをppmで換算すれば0.05ppm。
現在、年間2ppmのペースで二酸化炭素濃度が増えているが、0.05ppm分でも増加量の2.5%だ。この数字がさらに増えれば、例えば、気温が2℃上昇すれば、幾何級数的に激増するとなると、いくら二酸化炭素削減努力しても炭素吸収力の目減りに追いつかない懸念がある。6℃までなら大丈夫という訳じゃないだろう。
Clickで救えるblogがある⇒