それでも日銀は利上げすべし

Espresso Diary@信州松本:世界が円の役割に気づき始める。 もう日銀は8月に利上げなんかできないでしょう。もしも利上げをしたら、世界の市場に与える影響が大きすぎる。
アメリカのサブプライムローン危機が顕在化(と言っても今回が初ではない)し、日銀が今月上げると観測されていた金利が据え置きになる可能性が出てきた。しかし、今回も据え置いたら、ますます世界の金融市場は不安定になり、危機が雪達磨式に先送りされる気がする。

むしろ、日銀が利上げして来なかったから「世界の市場に与える影響が大きすぎる」ようになったのではなかったのか。
現時点ですら日銀の利上げは最低でも半周遅れだ。2006年春に行われた量的緩和の解除は日本株が猛烈に上昇した2005年秋には実施しておくべきだった。本当なら、土地の投機が始まっていたその年の春にしておくべきだった。そうしていたら、現在の短期金融市場金利は最低でも1%、あるいは1.5%ぐらいの水準になっていたろう。
2006年7月まで5年4か月続いたゼロ金利政策はあまりに長過ぎ、その間に世界の株は年率10%以上のペースで上がった。GDPは3%程度の上昇だたのにだ。サブプライムローンの行き過ぎも元をたどれば真犯人は日銀の超低金利政策だ。何事も行き過ぎれば、また別の場所で行き過ぎが発生する。
こうした行き過ぎから行き過ぎへの国際的往復運動が格差社会を広げたとさえ言える。バブルの頃、持てる者と持てない者の格差が広がったのと基本的に同じだ。
日銀が利上げをためらう消費者物価指数だって値下がりしたのはつい数年前までは高嶺の花だった薄型テレビなどの耐久消費財の大幅下落で相殺しているだけで日常的に消費する食料品やガソリン、日用品は確実に値上がりしている。最近の偽装食品や偽装衣料品も、言わば値上げ隠しのようなもので、実際の調達コストは上がっていないわけがない。
銀行はとっくに不良債権を解消し、最近は超低金利で利ざやが稼げないために余ったカネを海外で運用し、ミセス・ワタナベと海外で言われる富裕個人投資家までもが外国為替証拠金取引(FX)などに夢中だ。
今回のサブプライムローン危機で利上げの先送りを決定すれば、先月のようにまたニューヨークダウは急回復するだろう。しかし、ジェットコースターのような相場は延々と続き、続けば続くほど最後のクラッシュが派手になるのが目に見えるようだ。
先日のニューヨークダウの400ドルの下げが可愛く見えるほどのクラッシュがこの秋あたりに起こりそうな悪寒がする。1987年のブラックマンデーの下落率は22.6%、世界恐慌の引き金になった1929年のブラックサーズデーは12.8%だ。今回の暴落は高々3%程度の下落。日銀が利上げを見送れば、打ち出の小槌のような円キャリー取引が息を吹き返すだろう。相場はまだまだ懲りてないのだ。
今月も利上げ見送りとなると、日銀が今後利上げしそうになるたびに意図的に今回のような「小暴落」が演出されて圧力をかけられ、いつまでたっても利上げ先送りに追い込まれる可能性さえあると思う。世界には日銀が超低金利を続けて欲しいと思っている勢力が確実にいる。英語のWikiには示唆的なことが書かれている。
Carry trades are not arbitrages: they make money if nothing changes, but things may change.(キャリートレード裁定取引ではない。もし何も起きなければトレーダーは儲ける。しかし、何かは起きるものだ。
と。何も起きない方がトレーダーに良いに決まっているが、いくら先送りしてもいつかは起きるのだ。
上げろと言っても、高々0.5%が0.75%になるだけだ。ほとんど誤差のようなものだ。これだけでは円キャリーの急激な巻き戻しの要因にはならない。むしろ、日銀当局の姿勢を示すことで、円キャリーの行き過ぎにブレーキを掛け、よりソフトな巻き戻しに貢献すると思う。少なくとも来るべき大暴落の程度を和らげる効果はあるだろう。
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