親殺しはビミョーに増えている

404 Blog Not Found:書評-裁判所が道徳を破壊する 尊属殺人罪の廃止により親殺しが増えたというのであればまだ著者の主張にも耳を貸すのだが、この点において著者はこう書き記すのみである。
P. 68
最近も、親殺しがさかんに報じられています。子の親に対する道徳は、今はどうなっているのでしょう?

少なくとも、ずっと遵法的になったのは、統計が示している。

統計でも長期的統計と短期的統計があり、後者で見れば、親殺しは増える傾向にある。
警察庁被疑被害 左の警察庁平成18年の犯罪状況の図表(p132、一部割愛)を見ると、この10年、親族殺人は増加傾向であることは否めない(この図表は分かりづらく、左側の「総数」は被害者、それより下の年齢別は被疑者だ。また注1にある「解決事件を除く」とは、一般に言われる「解決した事件」を除くというものではなく、被疑者死亡のまま書類送検された場合とか検挙後、無罪放免されたケースなどを除くという意味だ。お役所用語には困ったものだ)。総数が平成9年の指数100から平成18年101とほとんど増えていないの対し、親殺しは100から150へと1.5倍増だ。親族で減っているのは、比較的遠縁の「その他の親族」の100⇒72だけで、それ以外の近縁関係は増えている。つまり血縁関係が深ければ深いほど親族殺しは増加傾向にある。
で、被疑者の方を見ると、親殺しは、14-19歳の100⇒167、20-64歳の100⇒155、65歳以上の100⇒20となり、未成年の伸び率が一番高い。サンプル数が少ないので比較する年によって乱高下しているが、おおおまかに見ても、64歳未満では増加傾向にあるようだ。
恐らく親殺し被疑者の年齢層は年少者と50歳以上の年長者に両極化しているのだろう。高齢化社会進展のために寝たきり、認知症の親を見かね、世話する子も疲れ果てて“殺してお互い楽になろう”親殺しが増えていることは想像に難くない。
実は尊属殺人が1995年(平成7年)に刑法から削除された根本的理由はこうした不憫な親殺しが増えたからだと思っている。実際、小飼弾さんがリンクしている「凶悪犯罪は低年齢化」していない〜子どもに対してせっかちな大人たち (広田教授の「教育も、教育改革もけしからん」):NBonline(日経ビジネス オンライン)のグラフを見ても60歳以上の殺人だけ右肩上がりで増えている。これには親殺しのみならず、妻殺し、夫殺しも含まれているだろう。
弾さんの挙げる栃木実父殺し事件も削除のきっかけであっても、根本の理由ではないと思う。だから、
尊属加重規定が実際に法から削除されたのは1995年。1973年の最高裁判決から実に22年後である。いかに立法が不道徳かつ不誠実だったかが伺える。
というのはお門違いだろう。
かと言って、尊属殺人が削除されたから親殺しが、特に少年に増えたかといえば、それも微妙だ。少年法とのバッティングで実質、少年に対しては尊属殺人削除前も死刑または無期となったわけじゃない。
簡単に言えば、親子の絆が比較的疎遠になったのに同居を強いられるうざさ度が増えたのが原因と思えるが、あくまで推測。統計を2、3見て結論できるほど世の中単純じゃない。
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