ベースロード=原発という神話

太陽電池は夜は出力ゼロなのでベースロードにカウントできないからせいぜい夏のピーク電力を補充するくらいしかできないという話がまことしやかにまかり通っている。風力発電も電力が不安定だから同様にダメというまことしやかな話が原発推進派の間で流通している。これらはためにする議論の典型で全く非科学的だ。
それじゃあ、大出力の原発や火力発電所は安定電力なのかと言えば、実はある意味最も不安定な電力だ。
世の中には二種類の不安定がある。原発は正常作動している限り、安定はしている。しかし、少しでも異常が起きてシャットダウンされれば一気にゼロになる。言わば非線形的不安定を内包している。原発は高出力なので文字通りオール・オア・ナッシングだ。福島第一原発事故がその好例。福島に限らず原発は結構非線形的に緊急停止する。
もう一つは線形的不安定。常時不安定だが、全体的には相対的に安定していて、ある程度予測の範囲内で推移する不安定。
太陽電池は予測可能な不安定電源だ。まず昼に出力が増え、夜は事実上ゼロになることは最初から分かっている。夏期は出力が高く、冬期は低下するのも最初から分かっている。昼間も天候に左右されるが、天気予報である程度予測可能だ。残りの不安定要因、太陽電池そのものの故障は、非線形的だが、太陽電池そのものが分散しているために全体的には無視できる。これは他の発電も同様だ。
風力発電は年中、オールウェザーで不安定だが、日本全国一斉に無風になるなんてことは事実上100%有り得ないという点で全体的には安定的に一定量の電力を供給することが可能だ。つまり、ベースロードになる電力量を確保できる。
陸上水力発電は年間の季節変動が大きい。多雨期と渇水期で違いが出て来るが、その代わり1日の電力は昼夜問わず安定している。
水力発電は海水の干満を利用する潮汐発電は太陽電池と同様に月と太陽との位置関係による増減はあるが予測可能。季節変動は基本的にない。波力発電は風力発電に似ているが、風力のように変動は大きくないので安定的だ。
一方の地熱発電は極めて安定的で事故以外の不安定要素は基本ない。突然、温泉が枯渇するリスクはあるが、これだって突発的に非線形的突然停止の可能性は低い。
こうした不安定な自然エネルギーを同時並行的に稼働すればかなりの部分はベースロードになってしまう。色々な折れ線グラフを描き、描いた後で全ての折れ線グラフを合成した折れ線グラフを描けば、変動幅が小さくなりグラフのボトムは高くなる。それがベースロードになる。
というか非線形的変動にも強くなるのでベースロード以上に安定的になる。ベースロード電力は何も原発と火力発電だけでなく流れ込み式水力発電地熱発電もベースロードとして利用されているが、元々ベースロードという概念自体が非線形破局を想定していないので非常時にはベースロードではなくなるからベースロード型発電に頼り過ぎるのは禁物だ。
故に自然エネルギーはベースロードにならないというのはナンセンスなデマだ。要は全体的に安定すればベースロードになる極めて概念的なもので、原発、火力発電だけがベースロードになるわけではない。今回の原発事故で分かったことはむしろこれらにベースロードに依存し過ぎると非線形的不安定には対処できなくなるということだ。要はベースロードの多様化だろう。原発もその一つとして当分機能するだろう。
コンピュータの世界ではメーンフレームからクラウドへと進化しているのに、コンピュータを語る時にはクラウド化を推奨する同じ人が電力を語る途端、原発や大型火力発電のメーンフレーム発電じゃないと駄目と言う人までいるが、滑稽以外の何物でもない。
Clickで救えるblogがある⇒にほんブログ村 経済ブログへ