細かい報告ばかりさせると却って原発重大事故を招く

大飯原発:警報公表遅れ 監視体制を強化 保安院、見通しが甘かった(毎日)

関西電力大飯原発3号機の警報作動の公表が半日後になった問題で、経済産業省原子力安全・保安院の黒木慎一審議官は21日、大飯オフサイトセンターで記者会見し、「体制が不十分で反省すべきことがあり、体制を強化した。結果的に不信感を招き、見通しが甘かったとの指摘は甘受しなければならない」と述べた。
この日、保安院は「特別な監視体制」の強化と、情報公表ルールの明確化を柱とする対応策を発表した。黒木審議官によると、トラブル発生の第一報から保安院、関電、プラントメーカー、県など監視体制の全メンバーに一斉配信して情報を共有する。作業の工程上で予期しない事象だった場合は、直ちに報道機関にも発表するという。
今回の警報は夜間(19日午後9時51分)に作動したため、警戒体制の拠点のオフサイトセンターは無人だった。情報は発生現場、当直の検査官、現地の保安院事務所長、地域統括官を経て、県には翌20日午前0時8分、おおい町へは同0時半に情報が伝えられた。県は「公表の判断は国がすること」としている。体制強化に伴い、関電や県職員もセンターに宿泊し、原発の中央制御室と同様に24時間即応態勢となった。

一体、何の大騒動なのかと言えば、
大飯原発:水位の警報作動 発表半日後で陳謝(同)

発電機の冷却水タンクの水位低下を示す警報が作動したと発表した。現地では「特別な監視体制」として、24時間態勢で経済産業省原子力安全・保安院や関電、福井県などの担当者が作業を監視している。保安院20日午前11時から記者会見し、発表が発生から約半日後になったことを陳謝した。
報道各社には20日午前8時半ごろ、記者会見開催の連絡があった。保安院などによると、警報が鳴ったことは、同原発に近い大飯オフサイトセンターに設置した「特別な監視体制」が発生と同時に把握。監視体制には保安院や関電、福井県などの担当者が常駐しているが、「安全への影響がなく、法令に基づく異常事象でもないので、夜中に発表する必要はないと判断した」という。保安院の担当者は20日、「前倒し発表をする認識はあったが、結果的に発表が遅れたのは、判断を誤った」と説明した。

「判断を誤った」というのはどういう意味なのかと言えば、要はこんなことぐらいで報道陣に叩かれるとは思っていなかったという意味だろう。で、この警報がどれほどのものだったのかという説明は記事を読んでも分からない。側聞するに原子炉とは直接関係ない発電機の冷却水タンクの水位が5センチほど低下したらしい。
けれど、この警報以上に警戒すべきなのは、些細なことで逐一報告する「特別監視体制」そのものだろう。保安院、関電、プラントメーカー、県、町、はたまた国までいちいち報告の伝言ゲームのようなことをするなんて愚か以外の何物でもない。最初に叱った副大臣は要は事なかれ主義なのだ。
大飯原発:副経産相が審議官を厳重注意 トラブル発表遅れ(同)

再稼働の準備作業中の大飯原発3号機(福井県おおい町)で警報器が作動したトラブルで、報道発表が半日後に遅れたため、牧野聖修経済産業相は20日、経産省の自室に黒木慎一審議官を呼び、「報道対応が遅れたことは遺憾」と口頭で厳重注意した。経産省原子力安全・保安院と関電が同日午後、おおい町で開いた定時の記者会見で明らかにした。

まず、こんな腫れものに触るような監視をしていれば、現場の技術者が参るだろう。彼らはプロなので警報が出てもどの程度のものかおよそ判断できるだろう。それを一つ一つ小さなことまで色々な人に、しかもほとんどは素人に逐一ご進講奉っていたらそれだけでストレスになり、神経が参る。
それは現場の士気に影響し、結果的に細々とした報告に追われるあまり、重大な危機の萌芽の芽を摘む注意力を散漫にさせる。またベタに彼らのプライドを傷つけ、外部に対する敵愾心さえ生まれかねない。
こういう監視体制なるものは日本の組織にありがちなもので、実際には外部から叱られるのを予防するための措置だ。中身より、外部へ「しっかりやってます」という印象操作が大事なのだ。
実際、原子力ムラの隠蔽体質も、淵源を辿れば、こうしたプロから見ればどうでもいいものまで事細かに発表しなけらばならないという圧力から自然に隠蔽体質に変化したのだと思っている。その結果、本当に臭いものまで蓋をしてしまい福島第一原発の最終的破綻にまでつながった。隠蔽体質の裏側には、矛盾するようだが「何でも報告」体質がある。
「特別監視体制」なるものも、どうせ大飯原発再稼働まで、つまり世間が注目しているまで粗相がないようにという下らない監視体制なのだ。「粗相があってはならない」は容易に「まずいものは隠蔽しよう」につながる。
世間が忘れると、「特別監視体制」はなし崩し的に解かれ、「隠蔽体質」だけが残るということになるだろう。
Clickで救えるblogがある⇒にほんブログ村 ニュースブログへ