今世紀は石炭の時代!?

big coal石炭からガソリンや軽油精製、中国に液化技術提供・経産省(日経) 石油の究極の代替エネルギーは結局のところ、石炭らしい。特にアメリカでは。表舞台から退場した筈の文字通りの化石燃料が特に9.11テロ以降主権を回復しつつあるという。
石炭液化は目新しい技術ではないが、コストがかかり眠れる技術だった。石油高騰によって相対的にコスト割安になっためか俄かに注目されている。この本は、隠れたアメリカの代替エネルギーの本命が実は石炭だとして、批判する。
中国で毎年膨大な死者を出す炭鉱事故や酸性雨や煤煙による汚い石炭公害のような露な形ではなく、より隠蔽された清浄さを装った石炭産業がアメリカで復活している。報道される風力発電バイオ燃料太陽電池のようなクリーンエネルギーが脚光を浴びているが、実際には失敗しており、現実に最も開発投資に力が注がれている石油代替産業は、最も二酸化炭素を排出する石炭産業とだというのだ。
なぜなら化石燃料の中で石炭が最も扱いやすく、輸送しやすく、貯蔵し易く、何よりも安価で豊富だ。なかんずくアメリカは世界で最も石炭埋蔵量に恵まれ、「石炭版サウジアラビア」の炭田を持っている。F16戦闘機も、石炭から液化したディーゼルで飛ぶだろうという。
それはブッシュ大統領が今年1月に発表したステートメントに呼応している。

The President's Coal Research Initiative. Coal provides more than half of the Nation's electricity supply, and America has enough coal to last more than 200 years. As part of the National Energy Policy, the President committed $2 billion over 10 years to speed up research in the use of clean coal technologies to generate electricity while meeting environmental regulations at low cost. To tap the potential of America's enormous coal reserves, the President's 2007 Budget includes $281 million for development of clean coal technologies, nearly completing the President's commitment 4 years ahead of schedule.

石炭のクリーン利用技術研究費は2007年度では2億8100万ドルで、バイオ燃料の1億5000万ドル、太陽電池パネルの1億4800万ドル、風力発電の4400万ドルよりはるかに多い。
BIG COAL」の著者Jeff Goodell The Rise and Fall of a Silicon Valley Family の著者でもあり、ITで生まれたパソコンもiPodも石炭産業に支えられるという、普通の常識的イメージとは違った、隠蔽された汚さの中での繁栄となるという。その根本原因は産業界の惰性という。
本書では石炭をしばしばdefault fuelと呼んでいる。つまり自ら意思で何もせず、選択せず、「お任せ」の場合の燃料は石炭しかないということだろう。著者はこの惰性的選択を最悪の選択と断じている。
ハードカバーの表紙を飾るデザインは石炭から得られる電力を表しているが、同時に地球を破壊する手榴弾のようにも見えるところが怖い。