負のGDP急成長(IPCC)と炭素為替

IPCC第四次評価報告書(AR4)のコアは不確かな未来予測よりも現在報告だろう。例えば、Annual fossil carbon dioxide emissions4 increased from an average of 6.4 [6.0 to 6.8] GtC per year in the 1990s, to 7.2 [6.9 to 7.5] GtC per year in 2000–2005 (2004 and 2005 data are interim estimates).(page2-3)のようなことだろう。化石燃料の炭素排出を負のGDPとするなら、世界の負の経済成長率は90年代に比べ、2000年以降、12.5%という驚異的成長だ。
地球サミットの1992年、京都議定書・COP3の1997年を経ても、減速どころか、猛烈に加速している。仮に1990年の化石燃料期限炭素排出を上記のrangeの下限6.0GtCとし、2005年は、その上限の7.5GtCとすると、この15年間の負のGDP成長率は25%にもなってしまう。ちなみに日本の同時期の負のGDP成長率は約8%で世界に大幅に遅れをとっている。
これを表の世界のGDP44兆$と比較するとどうなるか。一方は価格の付いていない重量だけの炭素である負のGDP、価格そのものの正のGDP。しかし、両者ををリンクして換算することは可能だ。例えば石油価格。石油は炭素も市場価格も含んでいる。
原油1バレル=100ドルとすると、その中に含まれる炭素はいくらか?
原油1バレルのうち重量比で85%が炭素だ。1バレル=0.136トンなので、重量比85%の炭素の量は0.1156トンになる。
一方、原油の価値は主に燃料として決まる。炭素が占めるエネルギーは全体の66%なので、原油1バレル当たりに含まれる炭素の値段は66ドルだ。
つまり炭素0.1156トン=66ドル
という炭素―通貨・為替(Carbon-Money Exchange)レートが成り立つ。
炭素1トン=571ドル
だ。
そうなると2005年の負のGDP
571ドル×7.5ギガトン(Gt)(75億トン)=4283億ドル
となる。世界は44兆ドルの正のGDPを産み出す代わりに1%のGDPを排出していることになる。実際にはもっと炭素含有量の高い石炭なども含まれているので、この数字は仮のものだが。
今のところ、負のGDPは負=負債にもかかわらず、誰も支払っていない。だから炭素排出は増える一方で大気中には負債の累積債務が雪達磨式にたまる一方だ。そして、もちろん、この累積債務には金利がなく、誰も利子を払っていない。この負債の決済や利払いに比べれば、排出権取引などお手盛りの遊戯のようなものだ。
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