地球温暖化対策にアンチエイジングは無効

IPCC第4次報告書第二作業部会報告書の海水酸性化懸念The uptake of anthropogenic carbon since 1750 has led to the ocean becoming more acidic with an average decrease in pH of 0.1 units の記述を受けてSGWさんが英王立協会の2005年報告Ocean acidification due to increasing atmospheric carbon dioxideを紹介されている。しかし、取り上げている石灰岩海洋投棄による酸性化中和化というのがどうも理解不能だ。
そもそも石灰岩というのは、CaCO3で、古生代オルドビス紀頃とペルム紀頃、中生代白亜紀頃の3回、海生生物起源の石灰岩が大量に生成したのだ。つまり古代の生物による二酸化炭素濃度を下げる活動の賜物で、石灰岩自体が二酸化炭素の貯蔵庫だ。
これを海洋に投棄したらどうなるか?
2005年報告にあるようにlimestone does not dissolve in surface waters, so additional processing, and energy, would be needed (Kheshgi 1995; Rau & Caldeira 1999)(page45)、石灰岩はなかなか溶けにくい。しかし、溶けるとどうなるのか。Caがカルシウムイオンとして溶けて酸性化を相殺するように働くするだろうことは分かる。しかし、同時にくっついていたCO3も遊離し、二酸化炭素と酸素に分離してしまう。
2×CaCO3→2Ca+2CO2+O2
ということになる。カルシウムイオンも増えるが、同時に二酸化炭素も放出されるので結局、同じじゃないかと思ってしまう。むしろ、二酸化炭素濃度をますます増大させてしまいそうだ。
狙いは多分、石灰岩を深海に落として、深海の水圧と冷温によって遊離した二酸化炭素がハイドレート化して、二酸化炭素は浮上せず、カルシウムイオンだけが海水に溶けるというものだろうか。それにしても効率が悪すぎないか。additional processing, and energy, would be needed ということで、最初から溶けるようにすれば・・・最初の時点で二酸化炭素を排出させるわけだから、ほとんど自己矛盾に思える。
もちろん報告はその他色々な意味で否定しているわけだけれど、そもそも古生代から延々と石灰岩が形成されたことは、現在の海は古代の海よりもミネラルが不足しているわけで、言い換えれば二酸化炭素吸収力が古代の海よりぐんと衰えているということだろう。
ということは、よく言われている「太古の地球は現在よりももっと温暖化した時期があったから、たかが数度の温暖化で地球が滅ぶなどということは有り得ない」という論調が説得力ないものだということが分かるだろう。
確かに古生代中生代は現在よりも平均で10度前後高かったが、「あの時君は若かった」のだ。暑さに耐えられるだけのミネラル豊富な体力があったのだ。
そう考えると、石灰岩は地球の垢、シミ、歯石のようなもので、これを海に戻しても・・・若返りは不可能。石灰岩のほかにも鉄粉を撒けばいいとか色々あるけれど、地球温暖化対策にアンチエイジングは無効ということだろう。安易なことには必ず落とし穴があるものだ。
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