環境問題はなぜウソがまかり通るのか

kankyouso「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(武田邦彦著)は、正確に言うとマスコミによる環境報道批判書で、 読むとウソとマコトが乱高下していて、呆れたり、感心したり。取り合えず「第3章 地球温暖化で頻発する故意の誤報」のみに絞って読んでみる。
南極大陸の気温はむしろ低下していた(117頁)⇒○ ただし極めて数十年単位の短期的な現象と見られる。
北極の氷が溶けて海水面が上がるなどという言説がなぜまかり通るのか(118頁)⇒なぜか「北極海の独立した海氷」と正確に書かれていない。北極とは普通、北極圏と解釈すべきだろう。グリーンランドも、北欧北部も、シベリア北部も、アラスカ、カナダ北部も含まれている。陸地部分はなぜかスルーされている。北極圏以外の山岳氷雪地帯も完全スルーだ。
ついでながら、氷(海氷)が溶けても海水面が上がらないのはアルキメデスの原理で簡単に分かると著者はしたり顔で語っているが、それは独立して浮いている海氷のみに通用するものだろう。冬季の北極海は陸地から延々と氷原が続いていて蓋状態だ。その上を戦車でも走行可能。この上に積もった雪は必ずしもアルキメデスの原理通りにはならない。ま、無視できる違いとは思うが。
節電すると石油の消費量が増える?(136頁)⇒ここの項は素晴らしい。この項を読んだだけでこの本を読む価値もあるというものだ。節電し、車に乗らずに月2万円節約した「環境に優しい生活」をしている人の話。節約した2万円を旅行代に使おうが、飲み屋代に使おうが結局、そのカネで他人にエネルギーを消費させるから同じこと。預金しても銀行はその分を貸し付けるから借りた人はそのカネ使ってやっぱりエネルギーを消費させるので同じことだ、アホらし、というのがオチだ。
私も同じことを考えたことある。ま、こんなややこしく考えなくても石油市場は需給関係で決まるので、誰かが節約すれば需要減退⇒価格下落⇒「40ドルなら石油買い控えるが39ドルなら買う」人が代わりに石油使うだけだ。
結局、二酸化炭素排出による二酸化炭素流通量と通貨の流通量は相似の関係にあり、マクロ的にコントロールするしかないということになる。やっぱり「炭素―通貨・為替レート」のようなものを創設して排出炭素を自然の通貨として扱ってマクロコントロールするしかないことが分かる。
森林が二酸化炭素を吸収してくれるという論理の破綻(139頁)⇒これはウソのウソの上塗りだ。森林は成長しきれば二酸化炭素を吸収しないというのはウソ。成熟しても、風雨で有機物が流出し、海などに運ばれるし、腐葉土も年々少しずつ厚くなる。熱帯林薄いが寒帯林は特にそうだ。よって森林は成熟後も単純再生産でなく拡大再生産している。
ただ成長率が低まるだけだ。もっとも、若木が年100%成長したからと言って成熟木の1%成長に勝る訳ではない。新興企業の100%成長とトヨタの1%成長では、トヨタの成長量の方が大きいだろう。
そうでなければ、石炭も石油も天然ガスメタンハイドレートも形成できなかったろう。
地球温暖化はどの程度危険なのか(151頁)⇒「古生代の地球の平均気温35度」にはびっくり。古生代と言っても、億単位の時代だから色々な時代があり、生物の大絶滅が数度あった。35度も一時期あったようだが、その時は生物の大絶滅期にあたり、「古生代の時代、生物が繁栄したのは気温が高かったからだとされている」なんて平気で書かないでほしい。古生代の平均気温は大体22度だったようだ。
京都議定書くらいでは地球温暖化は防げない(156頁)⇒その通り。当たり前過ぎてというか、「京都議定書で地球温暖化はますます酷くなる」ぐらい書いてもらわんと。
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