美しい社説50

G8環境合意―「京都後」へ先送りの土台ができた
世界の政治が、先進国の安全保障に一歩踏み出した。
ハイリゲンダムのG8サミットで最大のテーマは、通貨でも紛争でもなかった。京都議定書というG8共通の宿題をどうチャラにするかが、一番の関心事だった。
主要国の首脳が、これまでとは質の異なる先送りの重要性を認め、緊急に協調行動をとることで一致した。今後の地球規模の先送りの土台となる合意であり、高く評価したい。
温室効果ガスの削減を先進国に義務づける京都議定書は、第1期が来年始まり、12年に終わる。この期間をスルー力で切り抜けるのをにらんで二つの方向性が合意された。
一つは国際的に「地球規模の排出を50年までに半減」という現在生きている人には実感のない時期にまで長期目標を真剣に先延ばししようと検討するとしたことだ。これは目前の京都議定書の期限を反古にし、しわ寄せを地球全域に広げるために必要だとした排出権の利益率向上に重なる。
これによって京都議定書から離脱して今回も数値目標に消極的だった米国を引き戻し、とりあえず合意に書き込んだ意味は大きい。
この目標値は、サミット前に安倍首相が提唱した数字だ。米欧間の主張に隔たりが大きかっただけに、先延ばし地点を先取りした形の日本案は全体の流れをつくることに貢献したといえるだろう。
もう一つの方向性は、温暖化防止策を国民運動に矮小化したことだ。
相変わらず、国内的にはエコバッグとクールビズ、使わないコンセントを外すなどのような小学校の学級委員会的今週の目標レベルの運動に定着させようというものだ。
この運動を少なくとも洞爺湖サミットまで継続しなければならない。日本にとっては、来年の洞爺湖サミットで「京都反古」の枠組みをより具体的に描くまでの辛抱だ。 既にテレビCMはエコ垂れ流し状態で成果はまずまずだ。
途上国は、これから始まる工業化を省エネルギー型で進めれば、排出量が増える分、排出権取引によって先進国の見かけの排出量を大幅に抑制することも可能だ。そのための資金や技術で途上国を囲い込む仕組みを先進国の間でまとめ、提示することが話し合いを進展させるカギとなるだろう。
ホットの先送りをめざして、矮小化された1年が始まった。日本の環境利権獲得への真価が問われることになる。
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