先見の迷惑の迷惑

bewaad institute@kasumigaseki:人智の及ばざる公的年金、あるいは申請主義の存在意義で、コンピュータに関する「先見の迷惑 」が引用紹介されている。けれど、一つ一つ当たってみると、みんな眉唾なんだよね。
まず最初の、
「恐らく世界中のコンピュータ市場の規模は、5台だろう」(トーマス・ワトソン、IBM会長、1943)
調べてみると、
"I think there is a world market for maybe five computers,"

Famous misquoteとしてwikipediaにも1項目立てられてしっかり根拠がないと紹介されている。よほど有名なmisquoteの例なんだろう。
次に、
「家庭にコンピュータを欲しいと思う人などいる訳がない」(ケン・オルソン、Digital Equipmentの創設者・社長・会長、1977)
も、Ken Olsen
"there is no reason for any individual to have a computer in his home"
と紹介されているが、これも文脈無視による誤解とされる。このサイトによると、Olsenが言ったのは、現在普及しているパソコンのことではなく、官庁や原発なんかで使われているような、電灯のオンオフまで中央で統合制御する大コンピュータのことだったらしい。このコメントが笑いものにされたのは、パソコンが一般に行き渡った後の文脈無視の引用なのだという。a computer in his homeが勝手にパソコンと脳内変換されたわけだ。
最後に、
「640Kもあれば、誰でも十分だろう」(ビル・ゲイツ、1981)
この、
“640K of memory should be enough for anybody.”
も、こちらのサイトによると、本人が「そんなこと言うワケないだろう」と一蹴している。
結局、こういう類のものは、オリジナルの文脈から、時代や場所や状況が変わったところにポンと置かれ、「成功者と言っても、こんなもんだ」という希望的観測に則った面白がり方で一人歩きする傾向があるようだ。
bewaad氏が本物の官僚かどうかあずかり知らないけれど、真性官僚さまとしたら、極めて軽率な引用で、これじゃあ社会保険庁ならずとも、日本の官庁は基本的な裏付けもなしにいい加減に都合のよさげな情報集めて仕事(あるいは自分達の正当性の宣伝)していると思われても仕方ないだろう。
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