日銀における超低金利政策と超少数意見の格差解消問題

日銀・水野委員「サブプライム問題、金融機関の対応進んでいる」(日経) 日銀の水野温氏審議委員:個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に関して「金融機関の対応は進みつつある」「日本発の問題ではなく、短期金融市場は混乱していない」「直接の影響はない」「欧米対比で日本の株式相場の下落幅が大きい状況はいつまでも続かない」円相場の急騰について「これまで低金利を背景に(低金利の円を借りて高金利通貨などで運用する)『円キャリー取引』が続いてきたこともあり、いずれ落ち着くのではないか」
何が何でも超低金利政策を続けて欲しげな日経の記事だけ読むと、「心配するな」に誘導しているだけに見えるけれど、水野日銀審議委員の会見一問一答(ロイター)を読むと、もっと本質的なことをもちろん言っている。
ロイター一問一答の要旨。、
サブプライム問題は日銀の判断、私の判断を縛るものではないというのが基本認識。サブプライム問題に限らず、私は日本の経済・金融に関するファンダメンタルズを毎月分析して政策判断しているつもり。サブプライム問題を含めてさまざまな金融市場の動き、指標、さまざまな情報を丹念に分析して、きめ細かく経済情勢を点検しながら適切な政策判断を行っていく。9月については白紙であるとしかいいようがない。ただ、基本的な考え方は今の時点では日本経済のファンダメンタルズを揺るがす可能性は低いと考えている」
「グローバルな過剰流動性が生み出された背景の一つとして日本の低金利政策があると言われているという観点から、そういう面があることは否めないという気持ちでいれた。講演でも指摘したように、世界でたとえば外貨準備や産油国、あるいはロシアのお金が入ってきたりしているが、投資対象となる資産は限られているので、2003年後半から低金利政策が続く中で、リスクに対する感覚がまひしていたということ。世界的に金融環境が緩和的な状況を作り出してきた背景として、これは日本の経済・物価情勢に対しては適切だったと思うが、日銀の低金利政策が一因だったということ。これはあらためて今回の欧米市場よりも日本の株式市場の方が調整が大きくなったことと関係していると思う。金融政策というのは経済のグローバル化の中で基本的にはその国のファンダメンタルズにあわせていくのだが、同時に世界の金融市場に対する影響というのに目配りしていかなければならないということが今回の教訓」
「そこを乱すようなことがあるとすれば、おそらく住宅の問題調整が個人消費に影響を与えていく、サブプライム問題が個人消費に影響していく、あるいは雇用情勢の悪化が明らかになっていくということだと思う。そうなって利下げが起こったとしても、その背景が重要だ。FRBが利下げをしたから日銀は利上げはできないというような単純なものではないということを言いたかった」
「1カ月、2カ月遅れて影響はないのかというご質問だが、利上げがまったくない、あるいは当分できないとマーケットが判断すれば、それは半年たってもできないと思われることもあるだろう。私が利上げ環境が整ったと判断できれば速やかに行動すべきだといったのは、待つことによっていろいろな解釈が出てくるから。その中には、利上げをあきらめているわけではないのに利上げできないなと思われることなどもあり、いろいろな思惑が強まらないためには速やかに行うべき。総裁もおっしゃっているが、ファンダメンタルズから見ると中長期的には何らかの副作用が出るほど低い金利水準にあり、中立金利に近いところにあって、それで1カ月、2カ月待つという判断はありうるが、中立金利からはるか低いところにあるという判断を私は持っているので、ましてやファンダメンタルズからして他のメンバーより確信度合いが高いという私の立場からすると、1カ月、2カ月待つことが想定以上にマーケットのリアクションを生み、円キャリートレードがまた再燃してしまったり、利上げが当分できないからといって長期金利が低下するというようなことが起こりかねない。そう考えると、ゆっくりやるということと、判断に至ったらすぐ対応するということは整合性がとれいていると私は思う」

とまあ、まわりくどい言い回しだけど、チャンスがあれば、Take one more baseというアナイハイム・エンゼルスマイク・ソーシア監督と同じ考え方だ。ちなみにエンゼルスは首位攻防戦直接対決でマリナーズに3連勝。
水野日銀審議委員の意見は、当ブログの「日銀発世界同時株安?」「 それでも日銀は利上げするべし」などに書いていたこととほぼ同じだ。
水野委員も言及した2003年秋には量的緩和を解除しておくべきだったし、2004年春にはゼロ金利政策を解除しておくべきだった。そして2005年秋には0.5%にしておけば、2006年春0.75%(実際は量的緩和解除)、同年夏1.0%(実際は0.25%)、今年春1.25%(実際は0.5%)になっていたはずだ。
もし、そうなっていたら、円キャリー取引も現実よりはるかに限定的現象で終わり、サブプライムローン問題もこれほど深刻になっていなかったろう。
問題は、水野委員の超低金利政策批判は依然、1:8で圧倒的に超少数意見であるということ。この格差は日米金利格差よりも深刻だ。
もちろん、他の8人は情勢(空気)さえ変われば、あっと言う間に右に倣えで、実質1:1なのが微妙にアレなのだが。
こういう1人だけ異論を唱える人をグループに入れておけば、刺激になって議論が活性化するなんて社会心理学的な話はよく聞くが、でも、日本の場合、どうも外部向けガス抜きになってしまい易いところが、極めてアレだ。
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