金利差の罠

欧州中銀、利上げ見送り・米FRB、3兆円超を資金供給(日経) 欧州中央銀行(ECB)は6日開いた定例理事会で利上げ見送りを決めた。ユーロ圏13カ国に適用する政策金利は年4%で据え置く。
できれば0.25%下げて3.75%にして欲しかった。どうせ日銀は利上げできないのだから、とりあえず、あっちで下げてもらうしかなかったのだが。
大体、欧州中央銀行は2006年3月の時点で2.5%(日本はやっと量的緩和解除で金利0%)だった。その後、6度も利上げし、今は4.0%。日銀は2度利上げしただけで現在の日銀金利0.5%なので、金利差は2.5%⇒3.5%と当時よりも広がったままだ
常識ではインフレ懸念があるから金利が上げられるが、いつの間にか逆転現象が起きて金利が上がるからインフレ懸念が生じ、また金利を上げるという悪循環が起きているとしか思えない。
日欧金利差が開けば、金利上昇の引き締め効果は相殺されるどころか、却って流動性が増している。ドイツの株価指数もこの数年上がりっぱなし。石油価格の高騰によるインフレ懸念が、オイルマネーのユーロ圏還流で相殺されているという側面もありそうだけれど、そもそも石油価格の高騰にしてからが、円キャリー取引で上積みされたものだから、元の元は金利差だろう。
こういう現象を金利差の罠なんて言えないんだろうか。
流動性の罠 金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと。
パラフレーズして、
金融緩和によりある国の金利が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく国際間の貨幣需要が無限大となり、他の国が金利を上げても通常の金利政策が効力を失うどころか却って過剰流動性を増すこと。
とか。
一応、interest rate trap(金利の罠)という言葉はあるようだ。
これは、、長短金利の差が大きくなったことを利用したキャリー取引によるマネーが、リスク市場に流れ、金融市場の不安定化を招くというものだ。
同じことが国際間の金利差でも現に起きているわけで、「金利差の罠」はまあ、当たってなくもないか。
原文ではこう言っている。
the “Interest rate trap,” postulating a conflict between two key central bank objectives: price stability and financial stability. 中央銀行の二大目標、物価安定と金融安定との間の葛藤と仮定される金利の罠
どこかの国の中央銀行でも、利上げしようにも物価が安定し過ぎて葛藤している。葛藤と言えば、各国がサブプライムローン危機回避のために利下げして株式市場が戻しても、日本では同時に金利差縮小による円キャリー取引巻き戻しで円高にぶれ、日本の株式市場だけが取り残されるというのも金利差の罠のなせる業だろう。困ったことだ。
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