炭素本位制ノート4〜森林保有は儲かる

炭素本位制ノート3で、原油1バレル買うと76ドル分、Natureに支払うことになると書いたが、次は受け取り手。化石燃料起源の大気中の炭素は大雑把に言って排出量の約半分は今のところ海洋と陸生植物によって吸収されている。化石燃料起源の炭素を吸収するということは、炭素為替取引で儲けられるということだ。
炭素はマイナスの通貨なのだからNatureがそれを吸収するということはマイナスの通貨=借金を引き受けると同義になる。言い換えればHumanにプラスの通貨を貸すことになる。貸した通貨は返済してもらわなければならない。つまり露骨に言えば炭素を吸収してやる替りに相応の金をよこせだ。
大雑把に言えば、年間の化石燃料起源排出炭素7.5Gt、吸収分4Gtとして、そのうち海洋分の2Gtはとりあえず置いておく。
問題は陸生植物分の2Gt分。取りあえず、その分の全てが森林によって吸収されていると仮定すると、世界の総森林面積39億ヘクタールとして、1ヘクタール当たり0.5トン吸収していることになる。海洋と異なり、森林には人間の所有者がいる。国が所有していれば国有林自治体が所有していれば県有林、私人が所有していれば私有林という具合に。つまり、これが通貨仲介業者になる。これら森林所有者は森林を保全するというただそれだけで、Humanからの為替料を取ることができる。
炭素1トン当たり=571ドル(炭素為替分)+114ドル(炭素金利分)=685ドル
なので1ヘクタールの所有者は0.5トン=685ドル÷2=343ドル儲けられる。形式的に言えば森林保有者は343ドル得た利益でNatureに0.5トンの炭素通貨を代わりに払うことになる。
しかも、これは平均だ。熱帯雨林ならもっと儲けが大きくなる。人工衛星リモートセンシングで森林価値の評価は可能だ。
ところが現在、現実の炭素の排出権での値段は1トン=数10ドル程度だ。偉く安く買い叩かれているものだ。道理で森林破壊が止まらないはずだ。もともと大気中の二酸化炭素濃度というのは、Natureが制御してきたもので、人間はつい最近参入してきた新参者でしかない。炭素を市場化するには最大のプレーヤーNatureを無視して成り立つわけもなく、人間同士のご都合主義で成り立つ排出権市場など最初から失敗することが運命付けられている。
今話題のバイオ燃料に絡むインドネシアのアブラヤシを巡る問題「パーム油CO2放出量、化石燃料の10倍 NGO指摘」(朝日)も、森林の炭素蓄積、吸収力と無関係に炭素価格が決められているから起きているだけで、炭素為替と炭素金利に統一すれば、全てが明快になる。
森林を破壊して炭素為替料と炭素金利料を放棄してアブラヤシを栽培するのと、森林をそのまま保全するのとどちらが利益になるかという極めてビジネスライクな決定が可能になる。
仮にインドネシア熱帯雨林が平均の倍以上炭素収益力があるとすると、1ヘクタール当たり年間800ドル儲けられる。1ヘクタールをアブラヤシ畑に変えてパーム油の純利益(売上高ではない)800ドル稼げるかどうかだ。多分、儲けられないだろう。じゃあ、アブラヤシ植えずに何もせずに森林を保全した方が得に決まっている。面倒な仕事する必要もないし。熱帯雨林所有者ははそのまんま賃貸ビルのオーナーの如き富豪になるだろう。REDD(森林の消滅と破壊から出る温暖化ガスの削減、Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)などとぬるいこと言うまでもなく植林は利益を生む事業になる。
本日のNHK「クローズアップ現代」で亀山康子国立環境研究所主任研究員が「森林をそのまま何もせずに残すことで利益が得られるシステムがなかった」と言っていたが、これだけ儲けられれば十分だろう。(To be continued)
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