テロファーザ(TELOPHAZA)

telophaza1雪の横浜で、イスラエルバットシェバ舞踊団の公演「テロファーザ」を観に行く。コンテポラリーダンスを観るだけのつもりだったが、最終的に観客が巻き込まれて自分も踊らされた。
パンフレットに書かれている「観客がどこに注意を向けたらよいか分からないような場所が好きだ。観客に選択をゆだね、すべてを包括することの出来ない個々の瞬間を撒き散らす。観るという私たちの経験は、すべての要素を一度に理解できるということとは関係ない。我々はそれをすべて包括できるとは約束されていない。それは――幻影である――と言うことはできる」(同舞踊団のオハッド・ナハリン芸術監督)通り、どこに焦点を当てていいか分からない。舞踊の世界も量子力学不確定性原理風振り付けが浸透しているのかしらん。
けれど、人間はもっとしたたかで、やがて徐々に注意を向ける場所を固定しようとする。
「あ、あのダンサー綺麗な人だなあ」。人間は幻影を好むのだ。
好みはピンクのショートパンツで踊るスタイルの良い清楚な女性ダンサー。あの、モニター画面に映っている人ね。
この舞台、背景にモニター画面数個、それに対応するビデオカメラが数台下に配置されている。
telophazaダンサーがビデオカメラの前に立っていると、まるでロボットが充電器の前で充電を受けているようで、充電が済むと勢い良く踊り出す。そして、電池が切れると、すごすごと舞台から退場する。おもろい演出だ。
ダンサーは男女同じくらい、たくさんいるので、少しずつ退場しても影響はない。ダンサーが新陳代謝している。そういう演出でも、こちらはへこたれない。またあの子が出てくるのを待ちつつ、現前のダンスを楽しむ。日本人ダンサーの島崎麻美さんも黒いコスチュームで頑張っておられた。
時々ぎょっとすることもしでかす。ふと気が付けば、フロアに仰向けになった黒人男性ダンサーの顔がモロに座布団代わりになって白人女性ダンサーの大きな尻に敷かれている。うわぁ、気持ちよさそう。
暢気に楽しんでいたら、レーチェルと名乗る人が、観客に呼びかけて、「片手を丸く回し、片手を強く握り拳を作ってください」「今度は肘を回し、肩を回し、肩甲骨を回し・・・」
なーんだ、座りっぱなしの観客を気遣って、体操して一息入れましょうか。気が利いている。
けれど、それで済まなかった。終わりごろになると、「皆さんお立ちください。一緒に踊ってください」
ダンサー全員が舞台前面に勢ぞろいして、観客も目の前のお手本に習って踊りだした。ちょっと席と席の間が狭いのでやりにくかったけど、上半身と足だけでなんとか踊りに付き合えた。あの子は残念ながら舞台の端の方にいて、一緒に踊る幻影は味わえなかった。
でも、楽しかったぁ。
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