ダージリン急行

darjeelingウェス・アンダーソン監督、オーウェン・ウイルソンエイドリアン・ブロディジェイソン・シュワルツマンイカれた3人兄弟のインド珍道中。いつも列車に乗り遅れそうになるところに出鱈目加減が十分現れているのだが一丁前に旅程表をこしらえているところが痛い。
特段、まとまったストーリーがあるわけでもない。パリのホテルから始まりフレンチポップスで終わる。その間は夢の中のようだ。パリのホテルは弟が考えている小説の最後の部分なのだけれど、それまでが白紙だから結局最後まで行き着かないというのが本編。
父親の死とインドの農村の子供の事故死。関連してそうで関連していない。旅程表もいい加減なのだが、プロットもいい加減。それが売りだ。
なぜ旅程表通り進まないのか。3人ともそれぞれマイワールドに生きていてリアルな世界に覚醒している時間が少ないからだ。なんとかしまりをもたせようとたびたび3者協定を締結するのも各自バラバラの証拠。
各自色々なバックグランドを背負っているわけだけれど、そんなことは周りからみれば、知ったことではなく、普通に顰蹙な3人で列車から追い出されるときには「Shame on you!」と罵られる。旅は恥のかき捨てを絵に描いたような映画ではある。
帰国の空港で長男が頭の包帯を取って傷を確かめるが、そんなに直っていない。けれど、傷が表情に深みを与えると慰められ、航空機に搭乗しようとするが、タラップを上がる直前、ドタキャンしてインドの旅を続ける。最後のほうでそれぞれの人生を列車のコンパートメントに見立てて描かれるのが振るっている。つまり、人生列車は今日も行く。それぞれ傷を負ったまんま。他人は不細工と思うだろうけど。
色々なジャンルの音楽がこれまたバラバラに流される。そのバラバラさが却って見事だ。まとめて何かを完結することへの拒否、嫌悪とでもいうのだろうか。
変わることなく一貫しているのは美しいインドの風景。多少ディスカバー・インディア風だが、ただ見ているだけでも楽しめる。旅とはそういうものだろう。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログへ