Sweet Rain 死神の精度

sweetrain公式サイト。伊坂幸太郎原作筧昌也監督、金城武小西真奈美富司純子。不幸な運命を生きる自分を唯一理解し、愛してくれた男性を人生の最後まで拠り所にした女性の半生を描いた悲恋――と表現するよりも、死神を介してカムフラージュしなければ、その悲しみは伝わらない。主題歌「Sunny Day」を歌う小西が歌手活動の別名藤木一恵役でそのまんま出ている。
親しい愛する人を次々と不慮の死で失う藤木。家族を失い、リストカットする孤独な青春を送る。ようやくできた恋人にも先立たれる。気がついたら27歳。時代は1980年代半ば。まだ磁気テープのウォークマンの時代だ。死神が最初に取り付くのはその時だが、この金城が演ずる死神が死んだ恋人であろうことは途中で容易に想像出来る。
藤木はひょんなことで歌手でビューし、ヒット曲1曲残して謎の引退をする。
そして、結婚し、子供がヤクザになるのは現代=iPod、富司が藤木を演ずる2020年代後半はなぜかCDプレーヤーに逆戻りしている。恐らくCDプレイヤー時代が藤木にとって一番幸福な時代だったのだろうか。近未来でも、こんなオールドファッションな美容院はきっと残っている。20年後なんてもうすぐそこの未来なのだから不自然ではない。美人お手伝いアンドロイドと一緒でもさして違和感がない。
愛する人を不幸にさせないためにあえて息子にも会わない藤木が、かつての恋人と見るのは青空。それまではずっと雨空のような人生だったのが「人生最後の望み」は叶えられる。
このラストは「いつか眠りにつく前に」にどこか重なるところがある。人生最後に振り返る悔恨でうわ言に出てくる家族の知らない名前。この美容院も海岸の、営業的にはかなり現実離れした場所で死神を呼び寄せる。同じことをしているとしか思えない。
けれど、「愛する人はみんな死んでしまう」のに、自分だけ生き残ったのは、「自分は自分を愛することができない」という痛ましさのためだったのかと裏読みもしたくなる。不幸を呼び寄せていたのも、実はそのためだったのかもしれない。死神が藤木の内面の自殺願望が死んだ恋人に化身した姿であることは明らかだ。
美容院の場面も、藤木本人以外は、死神とアンドロイド、小学生たち。大人の現実状況を理解できる現実の人間は、実は藤木1人しかいないことを思うと、彼女の人生は本当は最後まで孤独で悔恨に満ちたものだったことが伺える。
死神の「醜い⇒見にくい」などの言葉のボケっぷりはあまり意味があるとは思えない。最初は恋人が死んだ以降のはやり言葉を理解できない設定かと思ったら、いきなり「みにくい」が理解できないというのはないだろう。
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