ブラックサイト(Untraceable)

untraceable公式サイト。グレゴリー・ホブリット監督、ダイアン・レイン。原題Untraceable(追跡不能)。アメリカ・ポートランドを舞台に繰り広げられるネット劇場型犯罪に挑むFBIサイバー捜査官の死闘。追跡不能とは殺人中継サイト自体が変異ウィルスのように次々とサーバーを変えるために管理者を突き止められないということらしい。
劇場型犯罪も新聞の活字を貼って送りつけたグリコ森永事件や赤インクで書かれた犯行声明文の酒鬼薔薇聖斗事件から随分進歩したものだ。アクセス数で殺人が自動化されているのだから。いわば「祭り」と殺人の合体で、あてつけな感じがする。
女性だからアクセスは新記録になるだろうとか、一見愉快犯のように見えるけれど、その男が愉快犯でないことは母親の捜査官(ダイアン・レイン)の娘に手を出さないことからなんとなく分かる。大体、死体をネット規制反対派の議員宅に放置するのだから、実はこの男がネット規制賛成派であることが仄めかされる。そういえば、日本でもネット規制で侃々諤々の議論が始まったばかり。ネット規制に反対するなら規制を逃れてやっつけてやる、とかなり屈折している。
しかし、この種の人間がいつもヒキコモリ系というのはいかがなものか。ヒキコモリ系はこんな力業やらないと思う。ネットの能力だけでなく、フィジカルな能力だって必要だ。
この男、1人でやっているのに、あれほどの殺人装置作るのは、作業も大変だし、誘拐も力業がないとできない。資材を調達するにはカネも相当かかる。お金持ちには見えないし。犯罪グループを結成しないとなかなかあそこまでは無理だろう。
We are murder weaponと言われても、それは犯人側の象徴的行為に過ぎず、「オマエら見てる人間全員共犯者だ」と言われても困るのだが、実は犯人のメッセージは悪質サイトにアクセスするな、ということになるのだから、ややこしい。
イデアはいいけれど、全体にそのアイデアに説得力を持たせる土台がイマイチなので、途中でどんどん弛緩してしまう。このサイトがuntraceableなのと同様、この映画の観客も物凄く飽き易くてuntraceableであることを製作者たちは思い知るかもしれない。そう考えると、この殺人中継の観客も飽き易く、度重なると却ってアクセス数が激減して犯人が戸惑ってしまう設定だった方がむしろ、もっとリアルで面白くなっただろうと思えてくる。66億人の好奇心なんて、世の中、そんな甘くないぞ、とか。
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