パラノイドパーク

paranoidpark公式サイト。ブレイク・ネルソン原作、ガス・ヴァン・サント監督、ゲイブ・ネヴァンス、テイラー・モンセン、ジェイク・ミラー、ローレン・マッキニー、ダン・リウ。日本ではまず有り得ない現場の切断死体写真を捜査官が高校生の前で見せる。子供の頃に見た電車に轢かれたばかりのはらわたむき出しの生々しいガマガエルの切断死体を思い出す。
当時のことを思い起こすと、アレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は人を殺してしまったことにショックを受けたのか、殺してしまった人間の死体にショックを受けたのか、どっちのショックが大きいのか分からなくなる。
そのショッキングな死体を見てしまったことは、大袈裟に言えば「世界の秘密」をのぞいたのに等しい。それこそが「僕らのちっぽけな問題とは別の次元のもっと大きな何かが世の中にはたくさんある」の「何か」だろう。16歳にとって、単純な、あからさまな、脚色も何もない現実を目の当たりにすることほどショックなことはないだろう。そのことに比べれば、新聞の見出しに収まってしまう、社会的文脈に収まってしまう「傷害致死」も、ショッキングではあっても相対的に小さな秘密でしかないだろう。
イラク戦争の問題がメイシー(ローレン・マッキニー)との会話で出るが、それも社会的文脈としての政治的問題とするなら「別の次元」とは言い難い。恐らく少女にとっては政治問題であっても、アレックスにとっては、もはや社会的文脈を超えた「別次元」の「何か」なのだ。あの死体現場のようなことが日常的に見られる場所として想像すること。殺すことと殺されること、死ぬことと死なすこと、それが機械仕掛けのように淡々と何事もなく起きている世界。
それとある意味対比的に表現されているのが、アレックスのガールフレンド、ジェニファー(テイラー・モンセン)の処女喪失告白のあっけらかん加減。女性は現実的で強い。アレックスが無関心になるのは同じ初体験でも「別次元」のものを見てしまったからだろう。
当たり前の、あからさまな現実をそのまんま見てしまうことが一番恐ろしい。それは、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の主人公名プレインヴューPlainviewに通じているように見える。想像を膨らませれば、アレックスはプレインヴューの少年版と言えなくもない。彼は真実を書き綴ったメモを燃やしてしまう。
スケートボードから貨車飛び乗りへの移行は自然に理解できる。貨車飛び乗りは、スケボーの拡大版だ。閉じられたパラノイドパークから無限に外部に開放されたグランドスケボーに乗った途端、別次元の世界に遭遇してしまうのは象徴的だ。
ツッコミドコロは、なぜ同じところを走っているのに一方の列車が飛び乗れるくらいノロノロ運転で、もう一方の列車が猛スピードで走っているのかとか、あることはあるけれど、気にするほどのものではない。
パラノイドパークのモデルになったアメリカ・ポートランドBurnside Skateparkはスケートボーダーの聖地らしい。映画でもあったようにスケボーオタが、映画冒頭に出て来る美しいバーンサイドブリッジの下に勝手に作ったという。いまや市も公認とか。出演者のほとんどは監督が「マイスペース」を使って公募したアマチュアという。
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